Author: monju (page 5 of 9)

植木等は無責任社員?

植木等の「日本一の男の中の男」を見ました。本作は、植木等の日本一シリーズの5作目だそうです。

あらすじは以下の通り。日本一植木p.jpg

大手造船会社である丸菱重工の腕利き営業マンである小野子(植木)は、造船所内でヘルメットを被っていない老人(東野英治郎)に注意する。東野は丸菱コンツェルンの会長なのだが、それが判った後も態度を変えない。

直後に小野子は、傍系会社の世界ストッキングに出向を命ぜられ怒り狂う。同社は業績が低迷しており東野の孫娘で米国留学帰りのミチコ(浅丘ルリ子)が中心となって業績向上に取り組んでいるところである。切り替えの早い植木はストッキングのアンテナショップの店員として業績をあげた後、宣伝部に配属。宣伝部長(藤岡琢也)の指示に反して高額の代理店との宣伝契約を破棄し、社内の美脚3人娘をCFに出演させ、公約した「1/10の経費で10倍の効果を上げる」を実現する。次に異動になった営業部では、部長(藤村有弘)は「ウチの営業は万全」と言うのだが、実は業界最大手の松越百貨店との取引が0であった。植木は、松越百貨店の仕入部長(谷啓)を接待攻勢で口説き落とし同社との大口契約を纏めるが、交際費を使わせない方針の浅丘とことごとく対立する。

更に、海外部長に出世した植木は、同社の製造に不可欠な技術供与元である米国デュパン社からの無理難題をつきつけられるが、自社工場の技術優位性を武器に、自社に有利な方向で契約を纏め、更にミチコのハートまで掴んでしまう。実は、植木の世界ストッキングへの出向は、彼の実力を見込んだ東野が同社の再生を植木に託して下した決定であった。と言うストーリーである。

良くある出世物語と言えばそれまでであるが、昨今世間を賑わせている2社の事件を思えば、相手が実力者であれ間違いは間違いと指摘する植木の態度に拍手を贈らざるを得ない。

また、世界ストッキングの役員は、自分で何事も決定できない社長(十朱久雄:ご存じ十朱幸代のお父さん)を始めとして、幹部連中はぼんくらばかり。特に最大手百貨店との取引口座がないにも拘らず「自社の営業体制は万全」と嘯く安定ボケで現状肯定派の藤村の様なタイプは、現実にいそうである。

この映画は、68年正月公開と44年も昔のものであるが、残念ながら一部の日本企業において本質は、44年間あまり変わっていないのかも知れない。また、某社の英国人元社長のオニイサンは、現代版植木と言うことになるのか???

尚、こ日本一植木.jpgの映画の見所は他にもある。先ず、同社の美脚3人娘として木の実ナナ、奥村チヨ、伊東きよ子が美脚を(少し)披露している。特に当時「花とおじさん」でブレーク中の伊東きよ子は、以降も「リンゴの花咲くころ」「花のマドンナ」とヒットを飛ばすのだが、貴重な映像である。

もう一つ、植木が谷を接待するショークラブで平尾正章が歌う「若いって素晴らしい(オリジナル:槇みちる)」のバックで踊りとコーラスを務めるミリタリールックのミニスカ4人娘のうち3人は山室英美子(69年にトワエモアとしてデビュー)、久美かおり(68年に「世界は僕らを待っている」でジュリーの恋人シルビーとしてデビュー)、平山三紀(70年に「ビューティフルヨコハマ」でデビュー)と夫々が全く異なるキャラクターで一世を風靡する芸能人としてデビューすることになるが、その前夜の映像を楽しむことが出来る。

(2011年12月)

やっぱり「華麗なる一族」

山崎豊子の勧善懲悪ものとして有名な「華麗なる一族」(1974)ですが、中小企業経営にとって学ぶところが有る様に思います。この作品は、数年前木村拓也主演でTVドラマ化されたこともあり、評論はいっぱいありますが、何か新しいコメントが出来れば、いいのですが・・・・。

先ず、おなじみのストーリーを短く纏めると、「業界10位の下位行である阪神銀行頭取である万俵大介(佐分利信)が、業界再編の中、生き残りのため、上位行である大同銀行に長男鉄平(仲代達也)が実質経営権を握る系列会社の阪神特殊鋼に対する融資額を膨らませた上で、同社を会社更生法申請に追いやる等して、大同銀行の頭取である三雲(二谷英明)を退陣に追い込み、結果同行を吸収合併し、新銀行の頭取に納まる。」と言うもので、その中で鉄平の出生の秘密や、大介の異常な性生活などが話をどろどろにしているものです。

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さて、主人公の万俵大介ですが(佐分利の存在感は格別です)、大介の生き残りにかける執念と、その為の発想は素晴らしいと思います。これが名台詞の「小が大を食う」なのですが、昭和40~50年代は「大きいことが良いこと」の時代だったと思います。その時代に規模で劣っても「企業体力で競争上優位に立つ」との考えで経営を進めていく大介の才覚は評価に値すると思います。

尤も、獲物である「規模が大きくて弱い銀行」を探すのに、大蔵省エリート官僚で娘婿の美馬(田宮次tamiyanakadai:100%はまり役の悪人)に指示し、その美馬は、同省の定年が近いノンキャリの監査員に地銀の役員への天下りをほのめかして、その見返りに銀行の監査報告書をコピーを入手して体力の無い銀行を物色する と言うはちゃめちゃな行為をやってのけます。

大介は、他にも自行から阪神特殊鋼に送り込んでいる財務担当役員に、同行の融資額について二重帳簿の作成を強要したり、やりたい放題です。

この様な才覚に優れたワンマン経営者は、独りよがりの理屈で、物事を進めていきますが、この当時はそれで良かったとしても、ガバナンス・コンプライアンスの時代である現在にはとても通用するとは思えません。

最近も色んな企業が世間を騒がせていますが、それも経営者が自身の才覚を過信した上での暴走だったのでしょうか。。。

尚、原作者の山崎豊子は、物語の最後に自殺した鉄平(大介は自分の父の子でないかと疑っていた)が大介の子であったとし、また、新銀行発足の直後に大蔵大臣が美馬に、新銀行を更に上位の銀行に吸収合併させるように指示するなど、別のやり方で、大介に強烈なお灸をすえています。

 

大介に比べると鉄平(仲代)、三雲(二谷)の線の細さが気になります。

二人は、互いを信頼しあう中なのですが、鉄平の高炉建設の情熱に絆された三雲は、阪神特殊鋼に多額の融資を古参役員(西村晃)たちの反対を押し切って決めてしまいます。

阪神特殊鋼は、高炉建設の工期の遅れから突貫工事に入り、その結果爆破事故を起こして、更生法申請に至り、多額の不良債権を発生させた三雲は失脚、大同銀行は阪神銀行に救済合併されてしまいます。

鉄平の事業計画がどこまで検証されたかについて、映画(小説も)でははっきりしませんが、工期の遅れから無理な作業を強行せざるを得なくなった鉄平の事業計画の杜撰さと、それに対して、多額の融資をしてしまった三雲の甘さは、やはり批判されるべきでしょう。

この案件は、(自社で高炉を持つと言う)鉄平の「夢」の論理が出てきますが、希望的観測に基づく事業計画の怖さを改めて認識させられます。

ここで、鉄平と父親の大介とのコミュニケーションが不十分と感じた、三雲は「事業の責任者たるものが、メインバンクの頭取と会話が無いとはどういうことか・・・」と重要なアドバイスを鉄平に行います。でも、鉄平は結果的にこれを無視して破滅してしまいます。

大介との親子間の確執、自身の夢の実現があるにしても、鉄平には上場会社の経営者としてステークホルダーに対する責任感が欠如していると言わざるを得ません。

工期の遅れが発覚した時に、冷静になって事業計画の(中止を含む)再検討、親子の揉め事をさておいて当面の資金繰りの支援要請、現経営陣による会社の再建計画を練りあげ融資先各行への説明を行うのが彼の役割だったと思います。

鉄平は真面目な一本気のある人物で、映画全編を通じて常に一生懸命なのですが、その一生懸命さゆえに周囲を冷静に見えなくなっているところがあります。映画と現実は勿論異なりますが、こう言ったタイプのビジネスパーソンは結構多いのではないでしょうか?

 

最後になりますが、大介の次女二子を演じる酒井和歌子がとても可愛いのですが、彼女が操る妙な関西弁が、今も頭にこびり付いて離れません。(2011年11月)

(写真は東宝映画より引用)

中小企業の海外進出のTV番組を見ながら・・・

最近は、中小企業の海外進出に関わる番組がTV放映されることが多いですが、先日、出張先で某放送局の海外向け番組を見ていると以下のような事例が紹介されていました。

東海地区の自動車部品メーカー(仮にA社とします)の事例なんですが、今までトヨタに部品を納入してきたのですが、トヨタが生産拠点をインドネシアに移転することになった。A社では、部品を国内で生産したのでは、トヨタのインドネシア工場に納入できない(円高で価格競争力が低下している)ので、インドネシアへの工場進出を検討中というものです。

そこでA社社長の発言なのですが「原料と機械さえあれば誰でも作れる部品なので、日本で作っててはコストが合わない」、確かそんな内容でした。「現地で製造を始めてもトヨタインドネシアが購入してくれる確証は無い」との話もありました。

その一方で、現地で工場団地を展開している商社の営業マンから「工場団地が進出を希望する企業でドンドン埋まってしまい、これが進出のラストチャンスです」みたいな売込みをかけられ、A社長は、その気になってしまいます。

もうひとつ気になった発言は、「日本では儲からないので、インドネシアで利益をあげて、それを日本に持ってくる」と言うものです。

これを見ていて、とても心配になりました。

まず、「材料と機械さえあれば誰でも作れる」様な部品なら、別にA社が態々、インドネシアに出て行って製造せずとも現地の企業で資金さえあれば、製造可能です。そんなところに現地の知見の無いA社が出て行ってうまくいくとはとても思えません。

もうひとつ心配なのは、「バスに乗り遅れるな!」論です。「他社がやっているから当社もやらねば・・・」と言うことであせってしまい、行き先を確認せずに皆が乗るバスに乗車してしまう (乗った後で行き先が間違っていることが判ってももう遅い)と言うことです。

TV局が番組を纏めるために、そのように単純化しただけかも知れませんが、A社は今までトヨタに部品を納入してきた実績があるのですから「材料と機械があれば誰でも作れる」だけでなく、トヨタが評価するノウハウを持っている筈です。これがA社にとっての「強み」ですから、インドネシアに出て行っても、この「強み」を引続き発揮できるかどうかを検討する必要があると思います。これを十分検討して「勝算あり」と判断してから進出を決めても決して遅くないと思います。周りが「千載一遇のチャンス」と言ってくるケースは多いでしょうが、じっくり慎重に検討することが重要です。

もうひとつは、「現地で稼いで日本に利益を持ってくる」ですが、A社では誰が現地で指揮を取るつもりなのか判りませんでした。まさか、「社員の誰かが現地で稼いでくれる・・・」と言うことでは無いと信じたいのですが・・・。

即ち、現地の責任者人選は成功・失敗の鍵となります。中小企業の場合は、企業のノウハウ(強み)は、社長個人の頭の中に入っていることが多いと思われます。だとすれば、社長が自ら、現地の事業が軌道に乗るまで自身で陣頭指揮を執る以外ありません。

こんな話ばっかりすると、「診断士は経験も無い癖に理屈ばかり多くて・・・」となりがちですが、円高で大変な時期だからこそ、あせることなく、自身の事業の立ち位置をしっかり捉えて方針を決めることが大切ではないでしょうか? (2011年11月)

エンディングノート

「エンディングノート」と言う映画が話題になっています。60を超えた元サラリーマンが、末期がんを宣告され、自身の死を迎えて、人生を総括する(葬儀などの手続・資産の整理を含めて)との内容だそうです。驚いたのは、この主人公は実在の人物で、既に物故者であり、生前の彼の姿をカメラで撮ったのは娘さんだと言うことです。その辺にいる単なるオッサンなのですが、死と直面しながら冷静に物事の処理が出来るのでしょうか・・・・。

物事を正しく終息させるのは、とても大切なことだと思います。今まで、中小企業の海外進出に際して、進出に先立ち、撤収の条件を決めておくことの大切さをお話してきました。生産拠点を求めての海外進出の場合(その進出先を市場と捉えて、その国に市場を築くのでない場合は)、他に有利な生産拠点があればそちらに移動し、既存の拠点は閉鎖せざるを得ません。動いているものを止めるには大きなエネルギーが必要ですが、これを怠って放置すると海外拠点が足を引っ張ることになり、本社の存続に影響を与えかねません。終わりを念頭において始めると言うのも夢のない話かも知れませんが、でも、避けては通れないものだと思います。

話が飛んでしましましたが、知人の会社がUSBによるエンディングノートを開発・販売しています。数年前に紹介を受けた際は、全く関係のないものだと思っていたのですが……。

以下のURLをご紹介しておきます;

http://www.adlux-inc.com/rouminous/endingnotetoha.html

exclamation 映画「エンディングノート」の監督さんをたまたま知っています。まだ少女の面影を残す華奢で小柄な女の子(!)ですが、カンヌ映画祭で話題となった「誰も知らない」の是枝監督について助監督を続けてきたというから、かなりの筋金入り。

彼女は、お父さんがガン宣告を受けた後、まさか映画にする積りなど毛頭ないまま家庭用ビデオでパパを取り続けたんだそうです。お父さんの元気な姿をとどめておきたい、という娘としての強い思いによるものだったのか、一人の男の生き様を最期まで記録するのだ、という映像作家としてのやむにやまれぬ衝動だったのか。

日本の高度成長を支えてきた世代の、まさに象徴のようなお父さん。
映画の中ではいつも笑っていて、死を前にしているとはとても思えないほどの明るさを見せていますが、明るさには影がつきもの、胸の奥深くにぐっと秘めたはかり知れない哀しみがひしひしと伝わってきます。武士道とは言いませんが、あの時代を生きた男は、きっと、みんなこうした矜持を持っていたのでしょう。   るんるんy

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森繁の社長シリーズ 

ケーブルTVで昔の映画を観るのが楽しみの一つなんですが、森繁の社長シリーズは、ホントに面白い。森繁の女好きでいい加減だが、人情家で魅力ある人間性、真面目一本の加藤大介、交際費で芸者と遊ぶことしか考えていない三木のり平、森繁の都合で引っ張りまわされ恋愛も意のままにならならない秘書課長の小林桂樹。其々のキャラクターが素晴らしいことに加えて、映画で演じられている内容が今の会社経営にも繋がる部分があることも魅力の一つである。(その点、同じ森繁でも駅前シリーズは単なるドタバタで、面白くない)

森繁の会社が何とか回っているのは、加藤大介による牽制や危機管理が機能していることが大きいと思う。

彼は堅物なので森繁や三木はうっとうしがっているのだが、結果的にこの堅物ぶりで会社の危機を救っている。例えば、定年直前の総務部長で軍隊上がりある加藤は毎月大げさな防火訓練を繰返している。

森繁が、客との商談と偽って芸者と逢引している間に、会社の倉庫で火災が発生。秘書の小林が社長の指示を仰ごうと連絡を試みるが所在不明。森繁が帰社すると倉庫は全焼しており、会社が倒産してしまう と落ち込む。そこに加藤が現れ、日ごろの訓練が効いて重要な商品はすべて別倉庫に搬送済みと報告する。

数日後定年退職の挨拶に訪れた加藤の前で、森繁は急遽役員会を開催し、人事規程を改訂し定年延長制度の導入を即刻実施する。

と言った具合である。

実際の中堅クラスの企業のワンマン社長は、反対意見を述べてくれる幹部社員をどの様に扱っているであろうか?また、危機管理に時間と金と頭をどこまで使っているだろうか?

現実には採算的に危機管理に金と時間と頭を使う余裕がなく、また、自身に反対意見を言ってくれる幹部を遠ざけているのではないか。

我々の様な経営アドバイスをする立場の人間が、その役割を果たすことが出来れば・・・・と思いながら、社長シリーズをまたまた見てしまうのだ。 (2011年10月)

 

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(写真は、東宝映画より引用

大東文化大学記念講演「アジア市場と日本企業の国際連携戦略」に参加

私が所属する板橋区中小企業診断士会では、区内有数の大学である大東文化大学と地域経済への貢献およびアジア市場との関わりをキーワードに関係強化を図っています。同学の創立90周年を記念した「アジア市場と日本企業の国際連携戦略」と称する講演会が11月9日(土)に開催されました。

講演は、『ベトナムの経済成長と日本企業との連携について』を早稲田大学社会科学総合学術院トラン・ヴァン・トウ教授から、『今後の中国経済と対中投資について』を富士通総研主席研究員 柯 隆(カ リュウ)氏から、『韓国企業の国際戦略と展望』を横浜国立大学経営学部国際経営学科 曺 斗燮(チョ トウソップ)氏から、それぞれの母国の状況・日本企業の課題などについて講演され、その後、パネルディスカッションへと続きました。

各氏の共通の論点として日本企業が相変わらずProduct outの姿勢から抜け出せていないこと、特に曺氏が話された、企業の海外展開に関する、現地への「移転」と「融合」の違いは印象的でした。日本企業は、移転能力は優れているが、融合による創造の発展に課題ありというもので、「グローバル化についての考え方のグローバル化」が必要なのかも知れません。

 

引き続き講演者、出席者での交流会が行われました。私が乾杯の音頭を取らせて頂き、賑やかな懇親の場となりました。今後、大東文化大学の皆様との間での協力に向けた第一歩となりました(13年11月)

板橋駅前本通り商店街振興組合秋祭りに参加

A5E6A5CBA5D5A5A9A1BCA5E02私が部長を務める城北支部国際部、板橋区診断士協会国際部のメンバーが板橋駅前本通り商店街振興組合秋祭(氷川神社祭礼)のイベントの運営スタッフとして参加しました。

国際部の業務は企業の海外展開のお手伝いだけでなく在日外国人による商店街の活性化や、個別の商店においても外国人旅行者の来店の促進、海外への情報発信による海外向けネット販売等、商店街との関係強化も課題の一つであり、この様な背景から、今回は、9月7~8日の2日間で、延12人がスタッフとして参加しました。

 

◆板橋駅本前通り商店街振興組合

同組合は、JR板橋駅から北西に伸びる約700mの商店街で、江戸四宿の一つである旧中山道板橋宿の3つの宿の中で最も日本橋に近い宿場町であった旧平尾宿に位置しています。加盟店は約90店です。

区内の他商店街同様に、昔からの地元店主が減少し、代わりにコンビニや携帯ショップなどのチェーン店が増加している状態です。その中で、我々の城北地域での活動が同商店街理事のお一人の耳に入り、今回のお手伝いの依頼を受けるに至りました。

 

◆祭りの概要

イベントの主体は板橋駅前本通りを歩行者天国にして、その中で、フリーマーケット、飲食店による屋台の出店。また、中心部にステージを設け、地元大学生のチアリーディング、中学生によるブラスバンド、子供から大人まで参加する和太鼓、フラダンス、ヒップホップダンス等、盛り沢山の催しが実施され、来訪者は2日間で約1万人と大盛況でした。

 

◆  参加の意義と今後の展望

同商店街理事の方々とは事前の打合せ・祭り当日に種々お話する機会を得て、商店街の課題や今後の展望など直接お話を伺うことが出来ました。

また、診断士側の地域支援に対する思いや、個別の企業・店舗診断の希望についてご理解を頂き、診断士の存在を身近に感じて頂くことが出来たのが大きな収穫であったと考えます。

既に個別診断案件1件が決まっており、これを機にお互いの信頼関係を醸成し、いろんな角度からのお手伝いが出来ることを期待しています。(13年9月)

大町市関係者との懇談会が地元新聞に掲載されました(13年6月)

私が所属する東京都中小企業診断士協会城北支部企業内診断士フォーラム(以下、KSF)が、あるきっかけから長野県大町市の知名度向上・同市産品の販売機会増大の方策について市民ベースでお手伝いをすることとなり、7人のメンバーで提案を纏め6月2日に同市を訪問。市議会・NPO法人代表等の有志の皆さんとの懇談会を実施しましたが、その模様が地元紙である大糸タイムスに掲載されました。

同市は、黒部アルペンルートの拠点で、白馬・安曇野に挟まれ観光資源が豊富、また、我々世代にとっては学生時代の合宿やスキーでお馴染なところです。・・・が、JRの便が悪く各観光地への移動が乗用車・バス中心になった為か、市内への客足の伸びは芳しくないようです。とは言え、市内には、塩の道と呼ばれる松本から糸魚川までの旧千国街道の中心的な宿場町としての佇まいと、古民家を改造した飲食店“わちがい”、特産物である納豆を練りこんだ麺“おざんざ”、嘗ての塩問屋を博物館にした“ちょうじ屋”、江戸時代の麻貯蔵庫を改装して地元の芸術家のアトリエとなった“麻倉”などのスポットがあり、同市の魅力の発信により、誘客拡大を図っている状況です。

今回は、同市をこよなく愛する地元のM氏からの要請に応える形で、KSF所属診断士のチームを編成し、ホームページの改善、都内商店街のイベントへの参加等何種類かの提案を持っての懇談会開催となりました。参加頂いた地元の皆さんの熱い思いを肌で感じることの出来た会でしたが、一方で、“誰が”、“何を”、“いつまでに”と言った具体策への転化の困難さを認識させられました。

ともあれ、事情を知らない我々“よそ者”の提案に耳を傾けて頂いた皆さんに感謝すると共に、機会があれば引き続き対話を継続して行きたいと考えています。

関西私鉄の広告を見て残念に思ったこと

ここ1ヶ月ほど、ずっと大阪で仕事をしているが、京阪電車や地下鉄の駅に気になる広告があった。

それは、ピタパと言う大阪の各私鉄・地下鉄を一つのプリペイドカードで乗り継げるSUICA/PASMOの様なカードの広告である。

4コマ漫画の形式をとっており、内容はこうだ:

 

場所は駅の改札口近くである。

①    ピーターと言う探偵風の若い男が、中年のオヤジに対して、“張本人はあなただ!”と告発する。

②    それを聞いた、ほかの乗客3人(女子学生他)が、“あなただったのか!”と非難の目を向ける。

③    実はこのオヤジは、このピタパなるカードを所持していなかったため、改札口で戸惑い、他の乗客(OLと学生)に迷惑をかけていた。これを理由にピーターに告発された訳だ。

④    オヤジは、女子学生等3人の前で土下座して謝罪し、それを黙ってみている3人。

 

この広告を見て不快感を覚えたのは私だけではないと思うのだが・・・・。その理由は2つある。

一つは、この広告が“うしろ指”とか“白い目で見る”と言ったいじめに繋がる雰囲気を感じさせことにある。

個人の感じ方なので、それはともかくとして、ビジネスの視点から見てもこの広告には突っ込みを入れざるを得ない。と言うのは、広告を含むマーケティングにはターゲット顧客の選定が必要と考えるからである。

要するに、自社製品を誰(どんな層)に買って欲しいのか?を出来るだけ細分化して分析し、その層に遡及効果の高いマーケティングを行うことである。

件のピタパは、公共交通手段である鉄道切符であるから、ターゲット顧客は老若男女を問わず幅広い層になる。更に、この広告に限って言えば、この商品を知る機会の多い若年層よりも、情報に接する機会の少ない中高年層(即ち、このオヤジもしくは、それ以上の年代)が主なターゲットになると思われる。

では、その年代が、この広告を見て“なるほどっ♪”と思い、この商品の購入動機につながるであろうか?この広告によって、自身の知らなかった新たな商品やサービスの情報を得ることができたとしても、自身と同世代のオヤジが女学生等の前で土下座する姿を見て、購入に積極的になる人間が実際どの程度いるのか?・・・と考えてしまう。

言うまでもなく日本経済は今後少子高齢化に伴う需要を取り込んで行かねばならず、その際のキーワードは、“より優しく、より丁寧に、より判りやすく”だと考えている。特に皆が利用する公共交通機関においては猶更である。確かに中高年者で勝手が判らず、改札口や自動販売機で戸惑っている高齢者を見かけることがあるが、これを揶揄するような広告で販売促進を図ろうとする関西私鉄各社の考えは理解しがたい。

「イノベーションと企業家精神」を引き合いに出すまでもなく、人口構造の変化は、企業にとってビジネスチャンスの筈である。高齢化に従い、今後ますます増加して行くであろう情報・IT関連の苦手な中高年層に優しく接して、その需要と取り込むことを考えても良いのではなかろうか? パソコン店や携帯ショップでIT関連の会話について行けなくなった同世代のオヤジの一人としてはとても残念な風景であった。(13年3月)

海外進出の課題 ロケーションセービングと移転価格問題

テレビのニュースでもさかんにアジアでの成長機会の取り込み(による日本経済の活性化)が取り上げられています。企業がアジア各国で事業展開するにあたり、宗教・商習慣の違い、インフラの未整備、テロや自然災害、インフレ・労賃の上昇などはリスクとして取り上げられますが、あまり馴染みのないリスクに移転価格問題があります。

では移転価格とは一体なんでしょうか?

日本企業は90年代以降、アジアに製造拠点をアジア諸国に移転しコストダウンを図ってきました。即ち、設計から製造まで一つの製品が完成するまでに、複数の国内での事業活動が関与する様になった訳です。

例えば、日本の製造業者Aが、ある製品を国内の工場で製造して、その製造原価が100,000円、日本での販売価格が120,000円だったとします。会社の管理や販売に関わる費用を一旦無視すると20,000円の利益が日本国内で発生します。この利益にかかる税金は、全て日本で課税されます。仮に税率を40%とすると、A社は、8,000円の税金を日本の税務当局に支払うことになります。

これをB国の製造子会社a”で製造することによって製造原価が90,000円に下がったとします。

この10,000円の原価の低減、即ちロケーション移動がもたらすコストの削減をロケーションセービングと言います。

B国で製造した製品を日本に持ち帰り、引き続き120,000円で販売すると、A社グループ全体の利益は30,000円となります。では、この利益に対する税金は、日本(A社)、B(a”)のどちらで支払うべきなのでしょうか?別の言い方をするとa”からAに対する売値はいくらであるべきなのでしょうか?

仮に売値を90,000円とすると、(a”の製造原価は90,000円なので)a”の利益は0Aの利益が30,000円。即ち、ロケーションセービング効果の全額が日本に帰属することになります。但し、これにはB国の税務当局は納得しません。B国は、ロケーションセービング効果は勿論のこと、今までの利益20,000円の大半も実際に製造しているa”の利益(a”Aに対する売値は、限りなく120,000円に近い金額が正当)であるべきと考えます。

このa”からAへの売値が両社の課税対象所得、即ち税収の源になるので、日本とB国、どちらの国にどれだけの課税所得が発生するかは、両国の税務当局にとって重要な問題となります。

A社としては、B国にある工場(a”)も含めた、A社グループ全体での税金を減らそうとして、仮にB国の税金が30(日本は前述のとおり40)とすると、出来るだけ、税率の低いB国にあるa”の利益を多く(日本の本社の利益を少なく)したいと考え、a”Aに対する売値を高くしたいと考えます。

一方、a”が、自分の100%の子会社でなく地元企業との合弁であった場合や、その他の理由により日本での利益を取込みたいと考える場合は、税率は多少高くても日本の利益を多くするためa”Aへの売値を安くする可能性もあります。

いずれにしても、Aa”を支配していますから、a”Aに対する売値や、Aからa”に提供する材料の価格、a”に支払わせる技術指導料等をAの意思で自在に調整し、Aa”の利益配分を調整出来る訳です。

しかし、日本、B国とも税金を多くとりたいとの税務当局の思惑があるので、Aa”との取決めの内容に目を光らせており、a”からAへの販売価格、その材料価格や技術指導料額がArm’s length price (赤の他人同士で同意するであろう価格)とかけ離れた合理性がないものと判断されると、その差額分は所得移転、すなわち脱税行為と見做され、多額の追徴金を課される惧れがあります。

これが親子会社間で意図的に調整された価格、即ち移転価格です。

従って、AAa”との価格や取決めが合理性のない移転価格と判断されぬように細心の注意を払う必要があります。

2012年に日本の国税から移転価格として海外への所得移転を指摘された事例としては:

・東京エレクトロン:143億円(米国、韓国子会社との取引:追徴税額 67億円)

・クボタ:48億円(オーストラリア子会社との取引:追徴税額 23億円)

・日本ガイシ:160億円(米国、ポーランド子会社向け取引:追徴税額 80億円)

といずれも大企業とは言え、とてつもない金額です。

一方、海外で指摘された事例ではダイハツがインドネシア税務当局より58億円の追徴課税支払請求を受け揉めているそうです。インドネシアでは、日本の本社が黒字で現地法人が赤字の場合、それだけで本社を儲けさせるために、わざと赤字にしたとイチャモンを付けられる可能性もあるとか・・・。

上場会社でなければ本社の決算内容は判りませんし、中小企業の場合ここまで極端な例は数少ないとしても、海外子会社との価格や、送金事由にはArm’s length priceとの比較で合理性が求められます。

海外展開におけるリスクの一つとして、こんな点にも是非、目配りをお願いしたいと思います。

(13年2月)

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