■相談file.1■では、入学辞退者の授業料返還についてのお話をしました。

それでは、大学以外の専門学校なども含め、4月の年度が始まって以降の中途退学の場合の授業料返還についてはどうなっているのでしょう。

大学の授業料返還については、2006年の最高裁の判決が基準になっています。この判決、簡単にいえば、「入学金は『入学できる地位の対価』なので入学辞退者に返還する必要はない。しかし、その他の授業料や設備費などは、3月31日までに辞退を申し入れれば原則返還しなければならない」ということです。

その根拠となっている法律が、2001年に施行された「消費者契約法」。入学していないのだから学校は退学による損害を受けておらず、損害以上の賠償を禁止する消費者契約法に反するためです。ただし、最高裁が言っているように、入学年度が始まる4月1日より前に入学辞退を申し出た場合に限る、というのが基本です。

消費者契約法施行以前の入試に関する訴訟の場合は、入学金、授業料、施設費などすべて返還する義務はないとしていました。入学も契約の一つです。つまり、学校は学生に対して教育を受ける機会や施設を利用させる代わりに、学生はその対価(代金)を学校に支払うということになります。裁判所は、学校と学生の間のこの契約には消費者契約法の適用があるとしています。

さてそれでは、退学を申し出るのが4月1日以降になってしまった場合、授業料などの返金を求めることは不可能なのでしょうか? もし仮に、4月に入ってからどうしても退学しなければならない事情が生れたら、たとえ1回も授業を受けなかったとしても授業料は1円も返ってこないのでしょうか。
仮に裁判に訴えても、上の最高裁判例があるので、いくら腕利きの弁護士が付いてもまず勝てる見込みはないでしょう。

でも、実は、裁判以外にいくつかの方法があるんです。そのとっておきの方法を、そっとお教えしましょう。

①  消費者センターや国民生活センターなどの公的機関に相談する。
でも、担当者は、先ほどの最高裁の判例を例に挙げて、「3月中だったら大丈夫だったんですけどねえ。4月に入ってからでは、ちょっと無理ですね」と冷たく言われちゃうかもしれません。

でも、そこで諦めてはいけません。次の手立てを考えるのです。

②  例えば、悪質な事業者に是正を申入れたり協議をしてくれるNPO法人があります。こうした組織は、消費者トラブルの実例を、ホームページで実名入りで公表することになっています。もしこの機関が取り上げてくれれば、信用が第一の学校にとっては大きなプレッシャーになるはずです。

③  聞きなれない言葉かも知れませんが、ADRという方法もあります。裁判に訴えることなく交渉でトラブルを解決するという、最近注目されている方法です。
政府系の機関の中には、学生と学校との間に入って和解交渉の仲介をする権限を持っている場合があるのです。こうした公的機関から仲介の連絡を受けたら、公共性の高い学校は、それを無視するのは難しいでしょう。そして、公的な仲介者が間に入った和解交渉が始まれば、さすがにゼロ回答という訳にはいかなくなる可能性が高いのではないかと思われます。

こうしたやり方を、実際に素人が実行するのはなかなか大変かもしれません。でも、ものものしい裁判と違って早期の解決が可能だし、何といっても経費がほとんどかからないのが最大の利点です。
本来であれば全額没収だった授業料が、ごく一部でも返ってくるならば、それだけの苦労をする甲斐もあろうってもんじゃないですか?

以上、もし授業料返還について困った時は、ぜひ“文殊”に無料相談を。