ここ1ヶ月ほど、ずっと大阪で仕事をしているが、京阪電車や地下鉄の駅に気になる広告があった。

それは、ピタパと言う大阪の各私鉄・地下鉄を一つのプリペイドカードで乗り継げるSUICA/PASMOの様なカードの広告である。

4コマ漫画の形式をとっており、内容はこうだ:

 

場所は駅の改札口近くである。

①    ピーターと言う探偵風の若い男が、中年のオヤジに対して、“張本人はあなただ!”と告発する。

②    それを聞いた、ほかの乗客3人(女子学生他)が、“あなただったのか!”と非難の目を向ける。

③    実はこのオヤジは、このピタパなるカードを所持していなかったため、改札口で戸惑い、他の乗客(OLと学生)に迷惑をかけていた。これを理由にピーターに告発された訳だ。

④    オヤジは、女子学生等3人の前で土下座して謝罪し、それを黙ってみている3人。

 

この広告を見て不快感を覚えたのは私だけではないと思うのだが・・・・。その理由は2つある。

一つは、この広告が“うしろ指”とか“白い目で見る”と言ったいじめに繋がる雰囲気を感じさせことにある。

個人の感じ方なので、それはともかくとして、ビジネスの視点から見てもこの広告には突っ込みを入れざるを得ない。と言うのは、広告を含むマーケティングにはターゲット顧客の選定が必要と考えるからである。

要するに、自社製品を誰(どんな層)に買って欲しいのか?を出来るだけ細分化して分析し、その層に遡及効果の高いマーケティングを行うことである。

件のピタパは、公共交通手段である鉄道切符であるから、ターゲット顧客は老若男女を問わず幅広い層になる。更に、この広告に限って言えば、この商品を知る機会の多い若年層よりも、情報に接する機会の少ない中高年層(即ち、このオヤジもしくは、それ以上の年代)が主なターゲットになると思われる。

では、その年代が、この広告を見て“なるほどっ♪”と思い、この商品の購入動機につながるであろうか?この広告によって、自身の知らなかった新たな商品やサービスの情報を得ることができたとしても、自身と同世代のオヤジが女学生等の前で土下座する姿を見て、購入に積極的になる人間が実際どの程度いるのか?・・・と考えてしまう。

言うまでもなく日本経済は今後少子高齢化に伴う需要を取り込んで行かねばならず、その際のキーワードは、“より優しく、より丁寧に、より判りやすく”だと考えている。特に皆が利用する公共交通機関においては猶更である。確かに中高年者で勝手が判らず、改札口や自動販売機で戸惑っている高齢者を見かけることがあるが、これを揶揄するような広告で販売促進を図ろうとする関西私鉄各社の考えは理解しがたい。

「イノベーションと企業家精神」を引き合いに出すまでもなく、人口構造の変化は、企業にとってビジネスチャンスの筈である。高齢化に従い、今後ますます増加して行くであろう情報・IT関連の苦手な中高年層に優しく接して、その需要と取り込むことを考えても良いのではなかろうか? パソコン店や携帯ショップでIT関連の会話について行けなくなった同世代のオヤジの一人としてはとても残念な風景であった。(13年3月)