Author: monju (page 6 of 9)

米国への生産回帰 re-shoringとは?

最近、米国企業が生産拠点を海外から国内に回帰する動き(リショアリング:reshoring)が出ているとのニュースを良く耳にします。主な原因はオフショアの生産基地である中国の人件費の上昇と言われています。でも、中国の人件費が高くなれば、もっと安い地域に生産を移すこともあるでしょうし、また、政治目的もあって一部企業の米国での生産回帰が大々的に喧伝されている等、実際には、単純に米国回帰のムーブメントが起っていると言う訳でもない様ですが・・・。

ある米国のサイトに「海外調達:隠れたコストにご用心!(Offshore Suppliers :Beware of Hidden Cost)」と言う記事がUPされていました。要約すると:

海外調達の場合の問題点として:

1.ロジステックに関わるトータルコスト:

運送費、保険の様にはっきりと見える費用から、生産地での労働問題や燃料価格の不安定さ、通関に要する時間など見えにくい側面まで全てを考慮する必要がある。

2.予期せぬ在庫水準

海外での予期せぬ事態発生による納期の遅延に備えるために、少なくとも当初予定した在庫水準の25%分を増加しておかねばならない。

3.品質管理

遠隔地であるため品質に関わる問題発生の際の解決力が低下するので、早急な解決のためには追加費用がかかる。

4.コミュニケーション:

言語と文化に加えて、時差はコミュニケーションの遅延をもたらし、結果リスクを増加させる。          (Shawn Casemore, President of Casemore & Coより引用)

と言うことだそうです。

言語や文化など今更のコメントがあったりして、当たり前すぎるんじゃないの? と思う一方で、「保有するべき在庫水準が25%高くなる」や「遠隔地であるため問題解決力が低下する」との指摘にはなるほど!と思わせるものがあります。採算上の観点だけでなく、在庫による資金や資産の健全性の観点を含めた総合的な判断が必要なのでしょう。

でも、これをよく読むと米国への生産回帰だけでなく日本への応援の様に思えて仕方がありません。

日本企業の品質・納期管理能力と問題発生時の真面目な対応を考えれば、瞬間的に円高で費用がUPしても、また、遠距離によるハンディがあっても、トータルでは決して米国企業に損をさせることは無いことを理解しているの企業も多いのではないでしょうか。

日本の製造メーカーも、色んな角度から国内生産の良さを見直すに時期に来ているのではないかと思います。 Offshoringにしてもreshoringにしても一時のムーブメントではなく、長期に亘り自社の強味を最大限発揮できるビジネスモデルの選択が必要であり、微力ながらそのお手伝をさせて頂くことができればと考えています。 (2012年6月)

Big Issue について

NPO法人Future Dream Achievement (FDA)が主催する「哲学の会」と言う集まりが月一回あります。FDAの事業目的は、雇用環境の構築・創出、地域活性化につながるまちづくり・環境保全に関わる事業ですが、障がいのある方をはじめとする就労が困難な方々に働く機会の提供を積極的に推進されています。

FDAの理事長である渡邉氏は、IT企業の代表者でもあり、嘗てお取引をさせて頂いたご縁で、参加させて頂いています。5月22日は、有限会社ビッグイシュー日本(本社大阪)の東京事務局代表である佐野未来さんの講演でした。ビッグイシューとは、イギリスで創刊した雑誌で、日本では2003年に事業を開始しています。販売員は全てホームレスであり、彼らに働く機会を提供することを目的としています。

佐野さんの話は、日本のホームレスの現状について、その数がリーマンショック以降その数が高止まりしていること、若年ホームレスの出現やその生活や収入の実態、また、どの様な経過でホームレスになって行くのか等、について実際の現場感覚からの情報に基づき進んで行きます。その中で、印象的なのは、ホームレスの人達も働く意欲を持っている・社会との接点を求めている(人が多い)と言うことで、彼らの就労への道づくりをして、ホームレスからの卒業を促すことが必要となります。

続いて、ビッグイシューの活動ですがホームレスの人達が、同社が編集する雑誌を街頭で販売することによって収入を得て貰う仕組みです。具体的には、販売員として登録、10冊を無償で供給、その売上の一部を自分の生活に使い、残りで次の雑誌を購入します。雑誌の値段@300円でその約半分が利益なので、大きな金額にはなりませんが、それでも自身でお金を稼ぎ、また、販売の過程でお客との会話が生まれることで、社会復帰への意欲が生まれてくる方が多いそうで、過去に150人以上がホームレスを卒業されたとの由。佐野さんによれば、チャリティでなく事業であり、これを拡大するには雑誌としての魅力度UPが必須だそうです。

中小企業の海外進出のことを思い浮かべながら、このお話を伺っていました。日本でのモノ作りの維持が困難との理由で海外に生産拠点を設ける中小企業が相次いでいる中、ホームレスを含む就労困難者が増加し空洞化が進む状況について、やはり何らかの対策が必要ではないかと考えてしまいます。リスク管理が出来ないまま海外進出するよりも、今一度、国内での事業継続ための方策を検討し、雇用の維持を図ることが重要ではないか・・・、どちらが正解と言うのではなく、その方向でのアドバイスも選択肢の一つに入れていきたいと思います。米国では、中国の労賃高騰とドル安から、国内での生産回帰を進める動きが活発化している様です。日本の場合は、円高が大きなネックではありますが、一方で顧客が最も求めている品質、納期、信頼性は世界でもピカイチですから、日本でのモノ作り国際競争力を今一度見直し、同時に雇用問題対策を図ることもアリなのではないでしょうか?

話がそれましたが、関西出身の佐野さん、話に熱が入ると大阪弁がどんどん出てきます。とてもシリアスな話の中でもしっかり笑いをとられるサービス精神も旺盛で、あっという間の一時間半でした。

今まで、ほとんど関心のなかったビッグイシューですが、一度、手に取って見ようと思います。

(2012年5月)

留学生は輸出産業???

週刊誌を買うことなどめったに無いのですが、駅の売店でWEDGE4月号を購入しました。

理由は「留学生ビジネスを輸出産業に」と言う記事があったためです。

記事の内容は、アジアの富裕層からの留学生を獲得することによる経済効果を輸出産業として記事にしたもので、留学生数を30万人まで伸ばすと(現在は14万人)国内の経済インパクトは5,000億円にのぼると言うもの。オーストラリアでは留学生数は56万人で1.5兆円を国内で消費しており、石炭・鉄鉱石に次ぐ第3位の輸出産業とのことです(ちょっと数字が合いませんが、いずれにしても物凄い金額)。

留学生を受け入れることで、外貨の獲得だけでなく、知日派を増やすこと、日系企業の人材確保などのメリットを謳っています。

そこで、各大学も留学生の獲得に注力している様で、最近では東大が2月インドに事務所を開設しています。東京大学(多分、他の一流大学も)は自身の強味を主に理系の研究力と考えていますが、一方で、アニメや洋菓子等の技術に日本の魅力を感じている留学生も少なくない様です。しかしながら、欧米と比較して、留学生受入れの歴史や体制と言語のハンディがあり(留学生が日本語を学んでも日本以外で役に立たない)実態は相当厳しい模様。

また、台湾人留学生を採用したことによって、年商4億円の部品メーカーが、海外の優良顧客との取引を開始し2年目で2,000万円の輸出売上を達成するに至ったとの記事もあり、中々興味深い内容でした。

私自身は毎年12月に在日留学生と中小企業診断士との懇親会に毎年参加していますが、留学生の語学力と日本に対するユニークな(日本人が気付かない)視点には、いつも驚かされます。

中小企業のグローバル展開となると判で押したように、海外への工場進出が話題になりますが、先ず優秀な留学生の採用による社内のグローバル化を図って行くことはとても意味のあることだと考えます。卒業後の就職環境を整えることにより、留学生にとっても日本の留学先としての市場価値も向上するのではないかと思うのですが・・・・。  (2012年4月)

川添高志氏の講演会に参加して

皆さん、ワンコイン検診ってご存知ですか?

川添高志と言う青年が、26歳で立ち上げた事業で、中野の商店街の真ん中に店舗を置き一科目あたり@500円で、予約なしで健診を受けることが出来るサービスです。川添氏は、看護師なのですが、健康診断を受けなかったために発見が遅れ、重度の合併症になった糖尿病患者の惨状を目の当たりにしたことより、主にフリーター、自営業者、主婦、生活保護者など定期健康診断と縁の薄い層を対象とした検診を行う会社“ケアプロ㈱”を設立しました。

この事業の素晴らしいところは、

1.川添氏が20代の若さで、社会の問題を鋭く分析した中から事業機会を捉え、且つ自身

で実践していること。

2.予防医療ビジネスを通じて、日本の医療費負担を軽減する(予防を怠ったために要する療養費は社会保険、即ち税金で賄われることになる。早期発見を普及させることにより税負担の減少に繋がる)との社会変革を目指していること。

3.前例のないビジネスモデルであり、同社の事業が医療行為と見做されかねないことより、当局や保健所等との軋轢が相当あったと推察されるが、粘り強い説得と自身のアイデアにより、事業発足に漕ぎ着けたこと。

(検診に必要な採血は、医療行為と見做され医師免許無では医師法違反に違反する。一方、医師を常駐させるとコストが合わないとの問題を、受診者自らに採血させることで解決している。)

4.米国のインストアクリニック(小売店、ドラッグストア内で簡易医療を提供する施設で、無保険者や多忙者の予防に貢献している)のビジネスモデルを日本流にアレンジして実践していることです。

私も「最近の若い者とは・・・・」と言う世代になりましたが、彼が日本の社会的な問題に危機感を持ち、その解決のために奔走している姿に感動させられました。

こう言った社会の問題点や矛盾の解決を目的とする起業家はソーシャルアントレプレナーと呼ばれている様です。一般の起業家が企業の金銭的価値の最大化を目標としているに対して、ソーシャルアントレプレナーは、事業の成功によって社会の変革の実現を価値の尺度としています。

日本の現状の閉塞感を打破してくれるのは、このようなソーシャルアントレプレナーかも知れません。

我々、診断士もかかる企業のお手伝いをすることで、社会変革に少しでも貢献できれば・・・・と考えさせられた講演会でした。(2012年3月)

伊藤忠商事のモットーは掛布?

新聞記事によると、伊藤忠商事の岡藤社長の商売のモットーは「か・け・ふ」、つまり「か:稼ぐ」「け:削る」「ふ:防ぐ」だそうです。大企業の社長サン達の訓話は中国の故事来歴などでやたら難しい中、とてもシンプルで、しかも高学歴のホワイトカラーばかりの社員に対する簡単明瞭なメッセージなのでとても新鮮でした。これだと忘れる社員はいないでしょう。

もうひとつ大切なことは、3つのうち2つ、即ち、「け」と「ふ」が守備的であることです。かつての商社のイメージはひたすら稼ぐ攻撃オンリーでしたが、ここでは、いたずらに規模の大きな商売を追いかけずコストに見合った利益重視の姿勢とリスク管理を重要性が謳われている様な印象です。特に、昨年来の大きな自然災害、大企業幹部の不正、欧州の金融危機など「予期せぬ事態」に対処出来るリスク管理能力が企業の存続を左右することになると思われます。

リスク管理の専門家を多数抱える大企業はともかくとして、中小企業においては日々の採算(即ち、稼ぐ・削る)の管理はされていても、リスク管理(防ぐ)については、保険をかける程度で、それ以外は、手が回っていないのではないでしょうか?中小企業診断士にとってもリスク管理は重要なテーマです。今までは、リスクと言えば取引先の倒産やや品質クレームへの対応などが中心でしたが、自然災害を含めたあらゆるリスク管理について、勉強していきたいと思っています。

ところで、元阪神タイガースの掛布雅之氏の会社は、残念ながら一昨年に倒産したそうです。あれだけ活躍された選手ですから、か(稼ぐ)の方は大丈夫だったのでしょうが、「け」と「ふ」がなかったのででょうか?もっとも、掛布さんは若い頃から「け(毛)」はなかった様に記憶しますが・・・・。

元気な中小企業のヒ・ミ・ツ

12月18日付の読売新聞に「元気な中小企業の秘密」と題して名古屋の「エイベックス」と言う会社に関する記事が掲載されていました。記事によると、自動車部品の2次下請けメーカーなのですが、新たな市場開拓によって受注に生産が追い付かない元気いっぱいの企業だそうです。その成功の秘訣ですが・・・、短い記事の中にいくつかヒントがありました。

先ず、「ミクロで見ればまだまだ、やれることはある」との社長発言。それから「これまでの取引先に頼るばかりでなく新しい市場を開拓」、「ダメでもともと・・」等々。

原動力はやはり技術力とコスト削減努力だった様ですが、「やれることはないか」の前向きの市場分析、「だめもと・・」の積極性など、記事にもあるようにハングリー精神に基づいた活動が、大きな成功要因と思われます。

もう一つ、印象的なのは、営業をかけた大手企業が「意外に話を聞いてくれた」と言うことです。中小・大手を問わず、新たな取り組み先の発掘によって現状を打破しようとの姿勢の表れでしょうか?

この記事の最後は、「上を向こう。元気な企業が増えることが日本の復活につながる。」と締めくくっていますが、正にその通りだと思います。

在日留学生との交流会(2011年12月10日)

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★ 今年も「在日留学生との国際交流会」に参加してきました。今回は、留学生だけでなく、日本で活躍する元留学生たちも参加し、在日の外国人ビジネスパーソンから見た日本企業について、興味深い話を聞くことが出来ました。

★ うち一人は40歳くらいの投資会社を経営する中国人です。 彼が出資している、日本の有名なスポーツ用品メーカーについて、「日本での成長に限界があるので中国市場を開拓する」由で、これはフツーの話。
また、この会社は100%日本国内で製造していますが、「これを中国に移管するつもりは無い」とのことでした。
理由は、「Made in Japanであることを評価し高い価格で購入する顧客層を相手に市場展開するから(中国で生産すると価値が低下し、価格を下げてもかえって売れない)」だそうです。

★ 「円高による競争力低下」⇒「海外への工場進出」と判で押したような話が多い中、新鮮な話でとても印象的でした。
対象顧客のニーズに合わせた製造・販売戦略と言う当たり前のことなのですが、その考えがあまり重視されていないケースが多いような気がしてなりません。生産拠点を海外に移すべき事業が多いのは事実でしょうが、自社の顧客が何を求めているかを事前に十分行った上での判断がやはり必要だと思います。

★ その他の元留学生は全員20代後半から30歳の若手。日本に留まって仕事をしている訳ですから、日本贔屓の方ばかり。「日本の若者は外に出ていく積極性がない」「会議をやっても結論が出ない」等、辛辣な発言もありましたが、「日本はMade in Japanの価値をもっと認識するべき!」との言葉には、つい頷いてしまいました。

特に、音楽関係の仕事をやっているマレーシアから来たY君は、「とにかく日本の音楽が好きで好きで・・・」 とのこと。技術力だけでなく、色んなところで日本の良さを評価してくれている外国人の存在は頼もしく、日本人自身がその良さを評価し、ビジネスに結び付ける様にしなければならないと改めて考えさせられました。

中小企業の海外進出 ~現場経営者の声から~

私の知人で、長年日韓の人材交流を推進するNPOの日本代表を勤めながら、韓国の先端テクノロジー機器の日本での販売などの事業を行う某氏より、中小企業の海外進出について、現場の目線からご意見を頂きました:

中小企業の海外進出ですが、不慣れな文化、言語の海外にいきなり出ていくことには私も反対です。
安易に海外進出するのではなく、慎重になるべきだと私も思います。
まず海外人材を雇用して、外国人の人材を育成すべきでしょうね。

私が10年来存じ上げている中小企業は、昨今の経済事情に憂慮して韓国に本社を移転することに決定しました。しかし、この決定ができるのは、10年前から準備していたからこそなのです。
現在、社員の30%がアジア人です。
経営者として、現地に乗り込み、陣頭指揮を社長みずからが行う予定です。
必ず勝つ試合をするのが経営者です。海外進出も、100%成功するために、下準備が必要ですね。

国内で、海外人材を日本人とおなじように公平に扱えば、途中で帰国してしまうことはないと思います。かえって、清潔で安全な日本の生活を大事に考えるようになります。

ビザに関しては、業種によって、条件が異なりますのでなんとも言えませんが、海外の優秀な人材を後継者にするぐらいの覚悟で望めば、海外への進出時期が来たときに、心強い現地法人の代表者になります。

優秀な海外人材を入社させられるか否かによって、今後、中小企業の寿命も変わってくるのではないかと思います。

以上、思いついたことを書いてみました。

知的資産経営のススメ 2011.11.27

「知的資産」って聞いたことがありますか?

「知的財産」は、何となくイメージが湧きますよね。発明やデザイン・ブランド、業務上のノウハウ等のことで、無形であることに特徴があります。また、「知的財産」のうち、特許権・商標権などその権利が保証されているのが「知的財産権」となります。

「知的資産」と「知的財産」は、同一ではありません。「知的資産」は、「知的財産」を含みますが、もっと広くアバウトな概念なのです。

経済産業省によると、
「企業が持っている資産のうち、企業価値を生み出す源泉であり無形のもの」
だそうです。

要するに「何が良くてこの企業は今まで生き残ることが出来たのか、今後も成長が期待できるのか?」を考えた場合、その「良い所」で且つ「無形のもの」のことです。

1. 何故、無形なのか?

一般に企業の価値の源泉は、有形資産 → 無形資産に 中心に変わってきていると言われています。「何が良くて・・」を考えた時、「他社より良い機械を持っている」ことより、「良い取引先を知っている」方が、大きいのではないでしょうか?

これって、人間も一緒ですよね。バブル時代の価値観は、
・ 青山に住んで、ポルシェに乗って(有形資産)
・ 東大を出て、一流企業に勤務して(知的財産)
が、価値の源泉だったのが、今では、そんなことどうでも良くて、一番大事なのは

・その人の性格や人との繋がり (知的資産)
になりました。
いささか強引ではありますが、企業も同じだと考えると判り易いと思います。

2. では、具体的には何でしょうか?

一般的には、

・人的資産:社員のノウハウ、経験、モチベーション等

・構造資産:企業の文化、仕事のプロセス(会社固有の)等

・関係資産:ブランド、顧客満足度、対外関係等
とされていますが、あまり面倒に考えず、「自社の強みは何か?(目に見えない良い所は何か?)」を探してみましょうと言うことで、「仁義なき戦い」風に言えば「わしゃーこれで何10年も飯食っとるんで!判っとろうが、のう!」の「これ」に相当します。
「これ」の内容は、企業にとって様々です。
例えば、商店や飲食店なら、店主の愛想の良さ、とか店員に可愛い女の子がいるとか(人的資産)、店に清潔感があるとか、勘定が早く客を待たせないとか(構造資産)、XX社の仕入れ担当者と懇意にしているとか、長年浮気しない客を掴んでいるとか(関係資産)、そう言ったものが、建前とは別の会社が生き残る真の要因なのかも知れません。

この様な資産は、会社の決算上の資産にならないので、社長自身があまり気に留めないことが多いのではないかと思います。
でも、これが生き残りの真の要因であるとしたら、この要因が逃げて行かないような対策を講じることが必要ですし、加えて、この要因を更に伸ばして、企業の成長を図ることが可能になるかも知れません。

中小企業診断士が診断を行う場合、先ずSWOT分析を行います。S=強み、W=弱み(の内部環境)、O=機会、T=脅威(の外部環境)の分析ですが、この「強み」=知的資産と考えてよさそうです。また、それが、他社との差別化の要因となります。

3. 知的資産の認識

a)  まず必要なのは、企業が持っている知的資産(「強み」)が何であるか、を振返って分析してみることです。忙しい社長サンは、そんなヒマなことを考える習慣がないと思いますが、でも、一度A4一枚に思いつくままにいくつでも書き出してみてください。

b)  次に、その「強み」が、どんな状態にあるか(ほっておいても大丈夫、継続できるか? そうでもないか?)、それを伸ばすことによって企業の成長に繋がるか?
を考えます。

c)   中小企業の場合は、その「強み」が社長個人や特定の社員に帰属している可能性が高いです。社長が引退したり、特定の社員が辞めたらどうなるのか?を考えます。
そうなると、強みを社内で共有化しておくことが必要となります。

4.知的資産の発信先

「強み」の取扱ですが、逃げていくのを防いだり、強化するためには、それを発信・共有化することが必要になります。それによって「強み」が主観的なものから客観的なものに変わります。
発信先は、「強み」の内容と目的によって異なります。

・社内への発信:

「強み」が企業価値の源泉なら、社員間で共有して、会社全体で活かすことになります。特に、事業継承の時期が迫っている場合や、特定の社員だけがその「強み」を持っている場合は、その社員が辞めたら「強み」が無くなるので、非常に重要です。

・取引先への発信:

取引先に「他社と何が違うのか」を積極的にアピールして理解して貰い、より良い取引条件を獲得します。昔「プロポーズ大作戦」と言うTV番組があって、男の子が女の子にプロポーズする時に、司会の西川きよしが、男性に向かって「付き合うとどんな良いことがあるのか」を彼女に対して説明するように求めます。すると男性は、「ゴルフを教えてあげるので、うまくなれる」とか何とか、一生懸命に自分の「強み」をアピールしますが、それと全く同じです。取引先を惹きつけるためには、自分の会社と取引すればどんなメリットがあるかを相手に積極的に伝えることです。

5. 知的資産を業績に結び付ける

知的資産(「強み」)を全社で共有して、業務に活かすには具体的なアクションが必要です。これをKPF(Key Performance Factor)と言います。

例えば、飲食店で清潔感が「強み」だとします。すると、KPFは、例えば、一日に何回トイレを点検・掃除したか? 客がテーブルを離れた後、どれぐらい早く食器を片付けたか等を実践して、その結果を記録します。その結果の改善状況と企業の業績の伸びの相関関係を見て、そのKPIが正しかったかどうかを判断。直接関係が無い様であれば、別のKPIを設定する様にします。

6.「知的資産経営」とは

「知的資産」そのものは、売買できるものでもなく、価値はありません(知的財産は別でしょうが・・・)。それを活かした経営が価値を生むことになります。企業が保有する知的資産を正確に把握し、適切に管理運用して、企業の価値向上に役立てることです。どの企業も人間と同様に「強み」がある筈です。その「強み」を「見える化」して、関係者で共有することによって、企業経営に活かして、他社との差別化を図り、生き残ることが求められています。

中小企業診断士は、この分野のスペシャリストです。建前だけでなく実効性のあるご支援を行っていきたいと考えています。

モンゴル料理店再訪(2011年10月)

2月にお話を伺ったモンゴル料理店チンギスハーンを再訪。経営者のスーホさんにお話を伺いました。3月の震災後数か月は客足が途絶え、家賃を初めとする経費だけが出ていく状況になり閉店も考えそうです。

でも、常連客からは続けて欲しいとの要請が強く、現在は歌舞伎町に移転してお店を継続しています。

民族衣装に着替えて食事するスタイルは変わらず、スーホさんとの会話も楽しめるので、同行した仲間もとても喜んでいました。このようなオンリーワン店は、ぜひ頑張って欲しいと思います。

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