皆さん、ワンコイン検診ってご存知ですか?

川添高志と言う青年が、26歳で立ち上げた事業で、中野の商店街の真ん中に店舗を置き一科目あたり@500円で、予約なしで健診を受けることが出来るサービスです。川添氏は、看護師なのですが、健康診断を受けなかったために発見が遅れ、重度の合併症になった糖尿病患者の惨状を目の当たりにしたことより、主にフリーター、自営業者、主婦、生活保護者など定期健康診断と縁の薄い層を対象とした検診を行う会社“ケアプロ㈱”を設立しました。

この事業の素晴らしいところは、

1.川添氏が20代の若さで、社会の問題を鋭く分析した中から事業機会を捉え、且つ自身

で実践していること。

2.予防医療ビジネスを通じて、日本の医療費負担を軽減する(予防を怠ったために要する療養費は社会保険、即ち税金で賄われることになる。早期発見を普及させることにより税負担の減少に繋がる)との社会変革を目指していること。

3.前例のないビジネスモデルであり、同社の事業が医療行為と見做されかねないことより、当局や保健所等との軋轢が相当あったと推察されるが、粘り強い説得と自身のアイデアにより、事業発足に漕ぎ着けたこと。

(検診に必要な採血は、医療行為と見做され医師免許無では医師法違反に違反する。一方、医師を常駐させるとコストが合わないとの問題を、受診者自らに採血させることで解決している。)

4.米国のインストアクリニック(小売店、ドラッグストア内で簡易医療を提供する施設で、無保険者や多忙者の予防に貢献している)のビジネスモデルを日本流にアレンジして実践していることです。

私も「最近の若い者とは・・・・」と言う世代になりましたが、彼が日本の社会的な問題に危機感を持ち、その解決のために奔走している姿に感動させられました。

こう言った社会の問題点や矛盾の解決を目的とする起業家はソーシャルアントレプレナーと呼ばれている様です。一般の起業家が企業の金銭的価値の最大化を目標としているに対して、ソーシャルアントレプレナーは、事業の成功によって社会の変革の実現を価値の尺度としています。

日本の現状の閉塞感を打破してくれるのは、このようなソーシャルアントレプレナーかも知れません。

我々、診断士もかかる企業のお手伝いをすることで、社会変革に少しでも貢献できれば・・・・と考えさせられた講演会でした。(2012年3月)