今回も、またまた懐かしの大作シリーズとして山崎豊子原作、山本薩夫監督による「白い巨塔」を取り上げます。

この作品は、山崎豊子が船場を舞台にした商人ものから、本格的な社会派小説へと舵を切った最初の作品(舞台は大阪ですが)であり、主演の田宮二郎にとっても、その名声を決定的なものにした記念碑的な作品です。映画が公開されたのが1966年ですから、もう50年以上も前になりますね
その後、「白い巨塔」は1977年に同じく田宮主演で、その後唐沢寿明や岡田准一の主演で都合5回にわたってテレビドラマ化されていますが、私はいずれも見たことはありません。
尚、この小説は
1973年の京都大学の国語の入試問題に使用されていました。 確か、浪速大学を退任する里見が大学の塔を振り返るくだりが引用されていて「白い巨塔の意味するところを〇〇字で記載せよ」と言う設問だったと思います。こんな40何年も前のことを覚えている人は多分もういないと思いますが・・・・・。

 さて、あまりに有名なストーリーを振り返ります。 

財前五郎は、岡山の貧しい農家出身で苦学して浪速大学医学部を卒業。現在は助教授で、その卓越した技術は週刊誌で紹介されるほどであるが、同時に極端な自信家・野心家である。産婦人科医で資産家の財前又一(石山健二郎)の婿養子となっている。
定年間近の浪速大学第一外科教授の東(東野英治郎)は、部下の財前の実力は認めながらも、そのスタントプレイと内規を無視する態度に我慢がならず、また、自身が退職後も大学に影響力を維持する目的から、次期教授を外部から招聘したいと考え、東都大学教授の船尾(滝沢修)に人選を依頼する。船尾は誠実な学究肌の金沢大学教授の菊川(船越英二)を推薦する。菊川は温厚な人柄に加えて妻を亡くしたばかりで子供はおらず、東は婚期を過ぎた一人娘の佐枝子(藤村志保)の結婚相手としても期待を寄せる。
これに危機感を抱いた財前は、義父の又一の資金と医師会の人脈を背景に内科教授で医学部長の鵜飼(小沢栄太郎)を自身の陣営に抱き込む。鵜飼には浪速大学の次期学長の野望があった。
一方、整形外科教授の野坂(加藤武)は、浪速大学出身の葛西徳島大学教授を支援し、3つどもえの戦いとなるが、最終的に財前と菊川の決選投票となる。
財前陣営は、部下である医局員の佃が金沢まで出向き菊川に教授への立候補の取下げを迫ったり、又一「向こうが権力ならこっちは金や」の掛け声のもと、第一回で撤退した野グループに対する買収工作などやりたい放題を行う。一方、船尾は、厚生省との関係を利用して、学長選に中立の立場を取っている浪花大医学部内の基礎研究グループの教授に対して助成金申請の承認を約束することで菊川への投票を促すなど、コンプライアンスどこ吹く風の泥仕合を仕掛けるが、最終的に2票差で財前が菊川を上回り財前が浪速大学の次期教授に当選する。

鵜飼の部下で内科助教授の里見(田村高廣)は、自身の患者である佐々木の診断について同期である財前に相談する。財前は卓越したレントゲン写真の読影力により、胃の噴門部癌であることを看破した。即刻外科手術を行うことになり、佐々木の担当は里見から財前に移る。
里見は胸部レントゲン写真の陰影が転移巣ではないかと疑問を持ち財前に術前の断層写真撮影を進言するが、財前は既往の結核の影響と判断してこれを拒否する
手術は成功したが、術後、一旦順調に回復した佐々木はその後容体が悪化して呼吸困難に陥る。里見は、財前に再度断層写真の撮影を行うように進言するも、財前は選挙戦に頭が一杯で、更に裕福でもない保険患者の佐々木の病状に関心を払わなかったため、因は胃癌の肺への転移であったにも関わらず術後肺炎と診断し助手の柳原に抗生物質の投与措置を指示する。最終的に佐々木は死ぬ。
亡くなった佐々木の妻は社会派弁護士関口(鈴木瑞穂)を代理人として財前の措置を誤診として訴える。この事態に怒った医学部長の鵜飼は、財前に進退伺をだせと迫るが、財前は「自分が有罪になったら鵜飼の学長の目もなくなる」と逆に鵜飼を脅し、裁判での勝利のための協力を約束させる。
裁判において、解剖学教授の大河内加藤嘉は、佐々木の死因が胃から転移した肺癌であることを証言する。これにより争点は、術前に肺癌を発見できずに胃の噴門癌の手術に踏み切ったことの是非、および術後の症状を肺炎と診断して抗生物質を投与し、肺がんに対する適切な措置をとらなかったことが「誤診」であったかどうかになる
肺への転移を確認せずに胃がん手術を行ったことに際して、原告側の証人である東北大学教授は「誤り」と証言したのに対し、被告側証人の千葉大学教授は「正しい」と証言し。裁判は膠着状態になる。
最後に、日本の癌治療の最高権威者である船尾が証言台に立つ。船尾は、手術前に肺がんを発見できなかったことはやむを得ないとするも、手術後の財前の判断を誤診であると証言し、原告側を喜ばせる。しかし、船尾は仮に術後の診断が正確に行われたとしても、患者を救うことは不可能であったため、誤診であったかどうかは重要な問題ではないとする。
そこで、裁判長は船尾に対して「財前の措置に問題はなかったと言うことか」と確認したのに対して、船尾は財前の医師としての態度や人間性に問題があるとして激しく糾弾するが、最後に浪速大学の新進気鋭の教授として反省・精進して欲しいと締めくくり、財前を無罪に導く。
教授選挙では争った船尾と鵜飼であったが、国立大学病院の名誉にかけて医師の過ちを認めるわけにはいかないとの利害が一致していた。舞台が法廷であるにも関わらず、財前の措置の是非については問題にならぬ様な理屈をつけ更にその人間性を強く批判し更生を期待して無罪に導くことで、措置そのものに対する周囲の言及を封じるという巧妙な作戦であった。
鵜飼と財前は船尾の指摘には馬耳東風で反省も全くないまま、里見には山陰大学教授の辞令が出て、浪速大学を去るのであった。 

またまた、長いあらすじとなってしまいましたが、山崎豊子モノはストーリーが長いのに加えて勧善懲悪に則っていろんな人物が出てくるのでどうしても長くなってしまいます。
さて、この重厚な人間ドラマが、軽薄この上ない振る舞いで世間のヒンシュクを買ったあのマスゾエさんとどうつながっていくのか。
後編では、ともに絶頂を極めつつ奈落の底をのぞき込んだ二人、財前五郎とマスゾエヨウイチの生き様に筆者独自の視点で迫ります!

後編につづく ^^) ~~