講演と執筆(伊藤) (page 1 of 3)

中小企業診断士って何?

中小企業診断士の伊藤です。

昨年は、3つの講演を行い、其々非常に有意義な経験でした。機会を頂いた各位に改めて御礼申し上げます。

さて、今年は2つの目標を掲げて活動して行きたいと考えています。

一つ目は、中小企業の海外展開のお手伝いです。コンビニや居酒屋の店員さんの多くは外国人であるように、自分たちの製品やサービスの販路を海外に求める事や、安くて良い部材があれば海外から調達する事は、決して特別な事ではなくなりました。でも、言葉や商習慣の違いからトラブルが発生する危険性も大きくなります。私の数えきれない失敗の中から、海外展開の要点をお伝えすることが出来ればと考えます。

もう一つは、市場調査・販促プラン作成に注力する事です。中小企業も新たな製品や市場開拓に力を入れなければなりません。大手企業ならば調査部があって、市場や新製品の動きに目を光らせていますが、一般的に中小企業には社内で調査を行う体制を作ることが難しいと思われます。そこで、我々診断士が市場調査・販促プランのお手伝いを引受けて行きたいと考えています。中小企業診断士の半数以上は、企業に勤務する現役のサラリーマンで、私の仲間も色んな

業種の企業から集まってきています。このノウハウを活かして調査・販促プランを作っていく所存です。

どうぞよろしくお願いします。

大東文化大学記念講演「アジア市場と日本企業の国際連携戦略」に参加

私が所属する板橋区中小企業診断士会では、区内有数の大学である大東文化大学と地域経済への貢献およびアジア市場との関わりをキーワードに関係強化を図っています。同学の創立90周年を記念した「アジア市場と日本企業の国際連携戦略」と称する講演会が11月9日(土)に開催されました。

講演は、『ベトナムの経済成長と日本企業との連携について』を早稲田大学社会科学総合学術院トラン・ヴァン・トウ教授から、『今後の中国経済と対中投資について』を富士通総研主席研究員 柯 隆(カ リュウ)氏から、『韓国企業の国際戦略と展望』を横浜国立大学経営学部国際経営学科 曺 斗燮(チョ トウソップ)氏から、それぞれの母国の状況・日本企業の課題などについて講演され、その後、パネルディスカッションへと続きました。

各氏の共通の論点として日本企業が相変わらずProduct outの姿勢から抜け出せていないこと、特に曺氏が話された、企業の海外展開に関する、現地への「移転」と「融合」の違いは印象的でした。日本企業は、移転能力は優れているが、融合による創造の発展に課題ありというもので、「グローバル化についての考え方のグローバル化」が必要なのかも知れません。

 

引き続き講演者、出席者での交流会が行われました。私が乾杯の音頭を取らせて頂き、賑やかな懇親の場となりました。今後、大東文化大学の皆様との間での協力に向けた第一歩となりました(13年11月)

板橋駅前本通り商店街振興組合秋祭りに参加

A5E6A5CBA5D5A5A9A1BCA5E02私が部長を務める城北支部国際部、板橋区診断士協会国際部のメンバーが板橋駅前本通り商店街振興組合秋祭(氷川神社祭礼)のイベントの運営スタッフとして参加しました。

国際部の業務は企業の海外展開のお手伝いだけでなく在日外国人による商店街の活性化や、個別の商店においても外国人旅行者の来店の促進、海外への情報発信による海外向けネット販売等、商店街との関係強化も課題の一つであり、この様な背景から、今回は、9月7~8日の2日間で、延12人がスタッフとして参加しました。

 

◆板橋駅本前通り商店街振興組合

同組合は、JR板橋駅から北西に伸びる約700mの商店街で、江戸四宿の一つである旧中山道板橋宿の3つの宿の中で最も日本橋に近い宿場町であった旧平尾宿に位置しています。加盟店は約90店です。

区内の他商店街同様に、昔からの地元店主が減少し、代わりにコンビニや携帯ショップなどのチェーン店が増加している状態です。その中で、我々の城北地域での活動が同商店街理事のお一人の耳に入り、今回のお手伝いの依頼を受けるに至りました。

 

◆祭りの概要

イベントの主体は板橋駅前本通りを歩行者天国にして、その中で、フリーマーケット、飲食店による屋台の出店。また、中心部にステージを設け、地元大学生のチアリーディング、中学生によるブラスバンド、子供から大人まで参加する和太鼓、フラダンス、ヒップホップダンス等、盛り沢山の催しが実施され、来訪者は2日間で約1万人と大盛況でした。

 

◆  参加の意義と今後の展望

同商店街理事の方々とは事前の打合せ・祭り当日に種々お話する機会を得て、商店街の課題や今後の展望など直接お話を伺うことが出来ました。

また、診断士側の地域支援に対する思いや、個別の企業・店舗診断の希望についてご理解を頂き、診断士の存在を身近に感じて頂くことが出来たのが大きな収穫であったと考えます。

既に個別診断案件1件が決まっており、これを機にお互いの信頼関係を醸成し、いろんな角度からのお手伝いが出来ることを期待しています。(13年9月)

大町市関係者との懇談会が地元新聞に掲載されました(13年6月)

私が所属する東京都中小企業診断士協会城北支部企業内診断士フォーラム(以下、KSF)が、あるきっかけから長野県大町市の知名度向上・同市産品の販売機会増大の方策について市民ベースでお手伝いをすることとなり、7人のメンバーで提案を纏め6月2日に同市を訪問。市議会・NPO法人代表等の有志の皆さんとの懇談会を実施しましたが、その模様が地元紙である大糸タイムスに掲載されました。

同市は、黒部アルペンルートの拠点で、白馬・安曇野に挟まれ観光資源が豊富、また、我々世代にとっては学生時代の合宿やスキーでお馴染なところです。・・・が、JRの便が悪く各観光地への移動が乗用車・バス中心になった為か、市内への客足の伸びは芳しくないようです。とは言え、市内には、塩の道と呼ばれる松本から糸魚川までの旧千国街道の中心的な宿場町としての佇まいと、古民家を改造した飲食店“わちがい”、特産物である納豆を練りこんだ麺“おざんざ”、嘗ての塩問屋を博物館にした“ちょうじ屋”、江戸時代の麻貯蔵庫を改装して地元の芸術家のアトリエとなった“麻倉”などのスポットがあり、同市の魅力の発信により、誘客拡大を図っている状況です。

今回は、同市をこよなく愛する地元のM氏からの要請に応える形で、KSF所属診断士のチームを編成し、ホームページの改善、都内商店街のイベントへの参加等何種類かの提案を持っての懇談会開催となりました。参加頂いた地元の皆さんの熱い思いを肌で感じることの出来た会でしたが、一方で、“誰が”、“何を”、“いつまでに”と言った具体策への転化の困難さを認識させられました。

ともあれ、事情を知らない我々“よそ者”の提案に耳を傾けて頂いた皆さんに感謝すると共に、機会があれば引き続き対話を継続して行きたいと考えています。

関西私鉄の広告を見て残念に思ったこと

ここ1ヶ月ほど、ずっと大阪で仕事をしているが、京阪電車や地下鉄の駅に気になる広告があった。

それは、ピタパと言う大阪の各私鉄・地下鉄を一つのプリペイドカードで乗り継げるSUICA/PASMOの様なカードの広告である。

4コマ漫画の形式をとっており、内容はこうだ:

 

場所は駅の改札口近くである。

①    ピーターと言う探偵風の若い男が、中年のオヤジに対して、“張本人はあなただ!”と告発する。

②    それを聞いた、ほかの乗客3人(女子学生他)が、“あなただったのか!”と非難の目を向ける。

③    実はこのオヤジは、このピタパなるカードを所持していなかったため、改札口で戸惑い、他の乗客(OLと学生)に迷惑をかけていた。これを理由にピーターに告発された訳だ。

④    オヤジは、女子学生等3人の前で土下座して謝罪し、それを黙ってみている3人。

 

この広告を見て不快感を覚えたのは私だけではないと思うのだが・・・・。その理由は2つある。

一つは、この広告が“うしろ指”とか“白い目で見る”と言ったいじめに繋がる雰囲気を感じさせことにある。

個人の感じ方なので、それはともかくとして、ビジネスの視点から見てもこの広告には突っ込みを入れざるを得ない。と言うのは、広告を含むマーケティングにはターゲット顧客の選定が必要と考えるからである。

要するに、自社製品を誰(どんな層)に買って欲しいのか?を出来るだけ細分化して分析し、その層に遡及効果の高いマーケティングを行うことである。

件のピタパは、公共交通手段である鉄道切符であるから、ターゲット顧客は老若男女を問わず幅広い層になる。更に、この広告に限って言えば、この商品を知る機会の多い若年層よりも、情報に接する機会の少ない中高年層(即ち、このオヤジもしくは、それ以上の年代)が主なターゲットになると思われる。

では、その年代が、この広告を見て“なるほどっ♪”と思い、この商品の購入動機につながるであろうか?この広告によって、自身の知らなかった新たな商品やサービスの情報を得ることができたとしても、自身と同世代のオヤジが女学生等の前で土下座する姿を見て、購入に積極的になる人間が実際どの程度いるのか?・・・と考えてしまう。

言うまでもなく日本経済は今後少子高齢化に伴う需要を取り込んで行かねばならず、その際のキーワードは、“より優しく、より丁寧に、より判りやすく”だと考えている。特に皆が利用する公共交通機関においては猶更である。確かに中高年者で勝手が判らず、改札口や自動販売機で戸惑っている高齢者を見かけることがあるが、これを揶揄するような広告で販売促進を図ろうとする関西私鉄各社の考えは理解しがたい。

「イノベーションと企業家精神」を引き合いに出すまでもなく、人口構造の変化は、企業にとってビジネスチャンスの筈である。高齢化に従い、今後ますます増加して行くであろう情報・IT関連の苦手な中高年層に優しく接して、その需要と取り込むことを考えても良いのではなかろうか? パソコン店や携帯ショップでIT関連の会話について行けなくなった同世代のオヤジの一人としてはとても残念な風景であった。(13年3月)

海外進出の課題 ロケーションセービングと移転価格問題

テレビのニュースでもさかんにアジアでの成長機会の取り込み(による日本経済の活性化)が取り上げられています。企業がアジア各国で事業展開するにあたり、宗教・商習慣の違い、インフラの未整備、テロや自然災害、インフレ・労賃の上昇などはリスクとして取り上げられますが、あまり馴染みのないリスクに移転価格問題があります。

では移転価格とは一体なんでしょうか?

日本企業は90年代以降、アジアに製造拠点をアジア諸国に移転しコストダウンを図ってきました。即ち、設計から製造まで一つの製品が完成するまでに、複数の国内での事業活動が関与する様になった訳です。

例えば、日本の製造業者Aが、ある製品を国内の工場で製造して、その製造原価が100,000円、日本での販売価格が120,000円だったとします。会社の管理や販売に関わる費用を一旦無視すると20,000円の利益が日本国内で発生します。この利益にかかる税金は、全て日本で課税されます。仮に税率を40%とすると、A社は、8,000円の税金を日本の税務当局に支払うことになります。

これをB国の製造子会社a”で製造することによって製造原価が90,000円に下がったとします。

この10,000円の原価の低減、即ちロケーション移動がもたらすコストの削減をロケーションセービングと言います。

B国で製造した製品を日本に持ち帰り、引き続き120,000円で販売すると、A社グループ全体の利益は30,000円となります。では、この利益に対する税金は、日本(A社)、B(a”)のどちらで支払うべきなのでしょうか?別の言い方をするとa”からAに対する売値はいくらであるべきなのでしょうか?

仮に売値を90,000円とすると、(a”の製造原価は90,000円なので)a”の利益は0Aの利益が30,000円。即ち、ロケーションセービング効果の全額が日本に帰属することになります。但し、これにはB国の税務当局は納得しません。B国は、ロケーションセービング効果は勿論のこと、今までの利益20,000円の大半も実際に製造しているa”の利益(a”Aに対する売値は、限りなく120,000円に近い金額が正当)であるべきと考えます。

このa”からAへの売値が両社の課税対象所得、即ち税収の源になるので、日本とB国、どちらの国にどれだけの課税所得が発生するかは、両国の税務当局にとって重要な問題となります。

A社としては、B国にある工場(a”)も含めた、A社グループ全体での税金を減らそうとして、仮にB国の税金が30(日本は前述のとおり40)とすると、出来るだけ、税率の低いB国にあるa”の利益を多く(日本の本社の利益を少なく)したいと考え、a”Aに対する売値を高くしたいと考えます。

一方、a”が、自分の100%の子会社でなく地元企業との合弁であった場合や、その他の理由により日本での利益を取込みたいと考える場合は、税率は多少高くても日本の利益を多くするためa”Aへの売値を安くする可能性もあります。

いずれにしても、Aa”を支配していますから、a”Aに対する売値や、Aからa”に提供する材料の価格、a”に支払わせる技術指導料等をAの意思で自在に調整し、Aa”の利益配分を調整出来る訳です。

しかし、日本、B国とも税金を多くとりたいとの税務当局の思惑があるので、Aa”との取決めの内容に目を光らせており、a”からAへの販売価格、その材料価格や技術指導料額がArm’s length price (赤の他人同士で同意するであろう価格)とかけ離れた合理性がないものと判断されると、その差額分は所得移転、すなわち脱税行為と見做され、多額の追徴金を課される惧れがあります。

これが親子会社間で意図的に調整された価格、即ち移転価格です。

従って、AAa”との価格や取決めが合理性のない移転価格と判断されぬように細心の注意を払う必要があります。

2012年に日本の国税から移転価格として海外への所得移転を指摘された事例としては:

・東京エレクトロン:143億円(米国、韓国子会社との取引:追徴税額 67億円)

・クボタ:48億円(オーストラリア子会社との取引:追徴税額 23億円)

・日本ガイシ:160億円(米国、ポーランド子会社向け取引:追徴税額 80億円)

といずれも大企業とは言え、とてつもない金額です。

一方、海外で指摘された事例ではダイハツがインドネシア税務当局より58億円の追徴課税支払請求を受け揉めているそうです。インドネシアでは、日本の本社が黒字で現地法人が赤字の場合、それだけで本社を儲けさせるために、わざと赤字にしたとイチャモンを付けられる可能性もあるとか・・・。

上場会社でなければ本社の決算内容は判りませんし、中小企業の場合ここまで極端な例は数少ないとしても、海外子会社との価格や、送金事由にはArm’s length priceとの比較で合理性が求められます。

海外展開におけるリスクの一つとして、こんな点にも是非、目配りをお願いしたいと思います。

(13年2月)

米国への生産回帰 re-shoringとは?

最近、米国企業が生産拠点を海外から国内に回帰する動き(リショアリング:reshoring)が出ているとのニュースを良く耳にします。主な原因はオフショアの生産基地である中国の人件費の上昇と言われています。でも、中国の人件費が高くなれば、もっと安い地域に生産を移すこともあるでしょうし、また、政治目的もあって一部企業の米国での生産回帰が大々的に喧伝されている等、実際には、単純に米国回帰のムーブメントが起っていると言う訳でもない様ですが・・・。

ある米国のサイトに「海外調達:隠れたコストにご用心!(Offshore Suppliers :Beware of Hidden Cost)」と言う記事がUPされていました。要約すると:

海外調達の場合の問題点として:

1.ロジステックに関わるトータルコスト:

運送費、保険の様にはっきりと見える費用から、生産地での労働問題や燃料価格の不安定さ、通関に要する時間など見えにくい側面まで全てを考慮する必要がある。

2.予期せぬ在庫水準

海外での予期せぬ事態発生による納期の遅延に備えるために、少なくとも当初予定した在庫水準の25%分を増加しておかねばならない。

3.品質管理

遠隔地であるため品質に関わる問題発生の際の解決力が低下するので、早急な解決のためには追加費用がかかる。

4.コミュニケーション:

言語と文化に加えて、時差はコミュニケーションの遅延をもたらし、結果リスクを増加させる。          (Shawn Casemore, President of Casemore & Coより引用)

と言うことだそうです。

言語や文化など今更のコメントがあったりして、当たり前すぎるんじゃないの? と思う一方で、「保有するべき在庫水準が25%高くなる」や「遠隔地であるため問題解決力が低下する」との指摘にはなるほど!と思わせるものがあります。採算上の観点だけでなく、在庫による資金や資産の健全性の観点を含めた総合的な判断が必要なのでしょう。

でも、これをよく読むと米国への生産回帰だけでなく日本への応援の様に思えて仕方がありません。

日本企業の品質・納期管理能力と問題発生時の真面目な対応を考えれば、瞬間的に円高で費用がUPしても、また、遠距離によるハンディがあっても、トータルでは決して米国企業に損をさせることは無いことを理解しているの企業も多いのではないでしょうか。

日本の製造メーカーも、色んな角度から国内生産の良さを見直すに時期に来ているのではないかと思います。 Offshoringにしてもreshoringにしても一時のムーブメントではなく、長期に亘り自社の強味を最大限発揮できるビジネスモデルの選択が必要であり、微力ながらそのお手伝をさせて頂くことができればと考えています。 (2012年6月)

Big Issue について

NPO法人Future Dream Achievement (FDA)が主催する「哲学の会」と言う集まりが月一回あります。FDAの事業目的は、雇用環境の構築・創出、地域活性化につながるまちづくり・環境保全に関わる事業ですが、障がいのある方をはじめとする就労が困難な方々に働く機会の提供を積極的に推進されています。

FDAの理事長である渡邉氏は、IT企業の代表者でもあり、嘗てお取引をさせて頂いたご縁で、参加させて頂いています。5月22日は、有限会社ビッグイシュー日本(本社大阪)の東京事務局代表である佐野未来さんの講演でした。ビッグイシューとは、イギリスで創刊した雑誌で、日本では2003年に事業を開始しています。販売員は全てホームレスであり、彼らに働く機会を提供することを目的としています。

佐野さんの話は、日本のホームレスの現状について、その数がリーマンショック以降その数が高止まりしていること、若年ホームレスの出現やその生活や収入の実態、また、どの様な経過でホームレスになって行くのか等、について実際の現場感覚からの情報に基づき進んで行きます。その中で、印象的なのは、ホームレスの人達も働く意欲を持っている・社会との接点を求めている(人が多い)と言うことで、彼らの就労への道づくりをして、ホームレスからの卒業を促すことが必要となります。

続いて、ビッグイシューの活動ですがホームレスの人達が、同社が編集する雑誌を街頭で販売することによって収入を得て貰う仕組みです。具体的には、販売員として登録、10冊を無償で供給、その売上の一部を自分の生活に使い、残りで次の雑誌を購入します。雑誌の値段@300円でその約半分が利益なので、大きな金額にはなりませんが、それでも自身でお金を稼ぎ、また、販売の過程でお客との会話が生まれることで、社会復帰への意欲が生まれてくる方が多いそうで、過去に150人以上がホームレスを卒業されたとの由。佐野さんによれば、チャリティでなく事業であり、これを拡大するには雑誌としての魅力度UPが必須だそうです。

中小企業の海外進出のことを思い浮かべながら、このお話を伺っていました。日本でのモノ作りの維持が困難との理由で海外に生産拠点を設ける中小企業が相次いでいる中、ホームレスを含む就労困難者が増加し空洞化が進む状況について、やはり何らかの対策が必要ではないかと考えてしまいます。リスク管理が出来ないまま海外進出するよりも、今一度、国内での事業継続ための方策を検討し、雇用の維持を図ることが重要ではないか・・・、どちらが正解と言うのではなく、その方向でのアドバイスも選択肢の一つに入れていきたいと思います。米国では、中国の労賃高騰とドル安から、国内での生産回帰を進める動きが活発化している様です。日本の場合は、円高が大きなネックではありますが、一方で顧客が最も求めている品質、納期、信頼性は世界でもピカイチですから、日本でのモノ作り国際競争力を今一度見直し、同時に雇用問題対策を図ることもアリなのではないでしょうか?

話がそれましたが、関西出身の佐野さん、話に熱が入ると大阪弁がどんどん出てきます。とてもシリアスな話の中でもしっかり笑いをとられるサービス精神も旺盛で、あっという間の一時間半でした。

今まで、ほとんど関心のなかったビッグイシューですが、一度、手に取って見ようと思います。

(2012年5月)

留学生は輸出産業???

週刊誌を買うことなどめったに無いのですが、駅の売店でWEDGE4月号を購入しました。

理由は「留学生ビジネスを輸出産業に」と言う記事があったためです。

記事の内容は、アジアの富裕層からの留学生を獲得することによる経済効果を輸出産業として記事にしたもので、留学生数を30万人まで伸ばすと(現在は14万人)国内の経済インパクトは5,000億円にのぼると言うもの。オーストラリアでは留学生数は56万人で1.5兆円を国内で消費しており、石炭・鉄鉱石に次ぐ第3位の輸出産業とのことです(ちょっと数字が合いませんが、いずれにしても物凄い金額)。

留学生を受け入れることで、外貨の獲得だけでなく、知日派を増やすこと、日系企業の人材確保などのメリットを謳っています。

そこで、各大学も留学生の獲得に注力している様で、最近では東大が2月インドに事務所を開設しています。東京大学(多分、他の一流大学も)は自身の強味を主に理系の研究力と考えていますが、一方で、アニメや洋菓子等の技術に日本の魅力を感じている留学生も少なくない様です。しかしながら、欧米と比較して、留学生受入れの歴史や体制と言語のハンディがあり(留学生が日本語を学んでも日本以外で役に立たない)実態は相当厳しい模様。

また、台湾人留学生を採用したことによって、年商4億円の部品メーカーが、海外の優良顧客との取引を開始し2年目で2,000万円の輸出売上を達成するに至ったとの記事もあり、中々興味深い内容でした。

私自身は毎年12月に在日留学生と中小企業診断士との懇親会に毎年参加していますが、留学生の語学力と日本に対するユニークな(日本人が気付かない)視点には、いつも驚かされます。

中小企業のグローバル展開となると判で押したように、海外への工場進出が話題になりますが、先ず優秀な留学生の採用による社内のグローバル化を図って行くことはとても意味のあることだと考えます。卒業後の就職環境を整えることにより、留学生にとっても日本の留学先としての市場価値も向上するのではないかと思うのですが・・・・。  (2012年4月)

川添高志氏の講演会に参加して

皆さん、ワンコイン検診ってご存知ですか?

川添高志と言う青年が、26歳で立ち上げた事業で、中野の商店街の真ん中に店舗を置き一科目あたり@500円で、予約なしで健診を受けることが出来るサービスです。川添氏は、看護師なのですが、健康診断を受けなかったために発見が遅れ、重度の合併症になった糖尿病患者の惨状を目の当たりにしたことより、主にフリーター、自営業者、主婦、生活保護者など定期健康診断と縁の薄い層を対象とした検診を行う会社“ケアプロ㈱”を設立しました。

この事業の素晴らしいところは、

1.川添氏が20代の若さで、社会の問題を鋭く分析した中から事業機会を捉え、且つ自身

で実践していること。

2.予防医療ビジネスを通じて、日本の医療費負担を軽減する(予防を怠ったために要する療養費は社会保険、即ち税金で賄われることになる。早期発見を普及させることにより税負担の減少に繋がる)との社会変革を目指していること。

3.前例のないビジネスモデルであり、同社の事業が医療行為と見做されかねないことより、当局や保健所等との軋轢が相当あったと推察されるが、粘り強い説得と自身のアイデアにより、事業発足に漕ぎ着けたこと。

(検診に必要な採血は、医療行為と見做され医師免許無では医師法違反に違反する。一方、医師を常駐させるとコストが合わないとの問題を、受診者自らに採血させることで解決している。)

4.米国のインストアクリニック(小売店、ドラッグストア内で簡易医療を提供する施設で、無保険者や多忙者の予防に貢献している)のビジネスモデルを日本流にアレンジして実践していることです。

私も「最近の若い者とは・・・・」と言う世代になりましたが、彼が日本の社会的な問題に危機感を持ち、その解決のために奔走している姿に感動させられました。

こう言った社会の問題点や矛盾の解決を目的とする起業家はソーシャルアントレプレナーと呼ばれている様です。一般の起業家が企業の金銭的価値の最大化を目標としているに対して、ソーシャルアントレプレナーは、事業の成功によって社会の変革の実現を価値の尺度としています。

日本の現状の閉塞感を打破してくれるのは、このようなソーシャルアントレプレナーかも知れません。

我々、診断士もかかる企業のお手伝いをすることで、社会変革に少しでも貢献できれば・・・・と考えさせられた講演会でした。(2012年3月)

伊藤忠商事のモットーは掛布?

新聞記事によると、伊藤忠商事の岡藤社長の商売のモットーは「か・け・ふ」、つまり「か:稼ぐ」「け:削る」「ふ:防ぐ」だそうです。大企業の社長サン達の訓話は中国の故事来歴などでやたら難しい中、とてもシンプルで、しかも高学歴のホワイトカラーばかりの社員に対する簡単明瞭なメッセージなのでとても新鮮でした。これだと忘れる社員はいないでしょう。

もうひとつ大切なことは、3つのうち2つ、即ち、「け」と「ふ」が守備的であることです。かつての商社のイメージはひたすら稼ぐ攻撃オンリーでしたが、ここでは、いたずらに規模の大きな商売を追いかけずコストに見合った利益重視の姿勢とリスク管理を重要性が謳われている様な印象です。特に、昨年来の大きな自然災害、大企業幹部の不正、欧州の金融危機など「予期せぬ事態」に対処出来るリスク管理能力が企業の存続を左右することになると思われます。

リスク管理の専門家を多数抱える大企業はともかくとして、中小企業においては日々の採算(即ち、稼ぐ・削る)の管理はされていても、リスク管理(防ぐ)については、保険をかける程度で、それ以外は、手が回っていないのではないでしょうか?中小企業診断士にとってもリスク管理は重要なテーマです。今までは、リスクと言えば取引先の倒産やや品質クレームへの対応などが中心でしたが、自然災害を含めたあらゆるリスク管理について、勉強していきたいと思っています。

ところで、元阪神タイガースの掛布雅之氏の会社は、残念ながら一昨年に倒産したそうです。あれだけ活躍された選手ですから、か(稼ぐ)の方は大丈夫だったのでしょうが、「け」と「ふ」がなかったのででょうか?もっとも、掛布さんは若い頃から「け(毛)」はなかった様に記憶しますが・・・・。

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