街角の法律活用術
文殊アシスタントの三田です。
私の知人で授業料の件で困っている人がいます。こんなケースはどうしたらよいでしょうか?
「息子が、学校推薦で某大学に合格を頂いたのですが、本人は学校が勝手に決めた大学なんてと、入学式にも出席せず、結局その後も一度も通学していません。家族みんなで随分説得したのですが、本人はとにかく勉強も嫌いなもので、通う気はまったくありません。
いつまでも宙ぶらりんにしたままでは、大学に対しても失礼なので、大学に退学届けを出そうと思っています。ただ、まさかこんなことになろうとは思わず、入学金を払い込む際、一年分の授業料を一括払い込みをしてしまっています。合計すると、100万円を超えます。入学金は、まあ仕方がありませんが、一度も出席していない授業料は、どぶに捨てたようなものです。何とか、一部でも返還して欲しいのですが、可能でしょうか?」
私なりに、頑張ってちょっと判例を調べてみました。
未受講分は不当利得として返還請求が可能みたいですね!
①不当利得返還請求事件
東京高裁H17/2/24
原審東京地裁H15/10/23
②学納金返還請求事件
京都地裁H17/3/25
③不当利得返還請求事件
横浜地裁H17/4/28
不当利得の返還請求という観点は、とても興味深いものがありますね。
この場合、大学側が授業の提供という債務を履行しているのに、本人が自分の都合で勝手に受講しなかったということになります。民法的の原則から言えば、相手方の履行提供がありながら本人が受領拒否していると考えると「受領遅滞」ということになって、相手方(大学)は債務不履行責任を免れることになります。つまりこの場合、悪いのは学生の側であって、大学側には一切非がないことになってしまう訳です。
従って、裁判所も、以前は、学生側がいったん納入した授業料を返還してほしいという請求を認めてきませんでした。
ところが、2001年に、消費者契約法が施行されて、事態は大きく変わりました。
2006年11月27日、最高裁の画期的な判断が出ました。納入した学費は返還しないとの規定があったとしても、実際の損害額を超える部分は無効であり、大学は入学辞退した学生の授業料相当分を全額返還すべきだとの判決を言い渡したのです。
これ以降、入学辞退した場合、受講しなかった授業料については返還するという流れが確立しました。
企業や学校に比べて、一般の消費者や学生は圧倒的に非力です。消費者の保護を重んじる時代の流れによって、国民生活センターや消費者庁など消費者をサポートする公的機関が生まれ、法律面でも手厚い保護が図られるようになった訳です。
でも、いくら法律で保護されているからといって、安心してはなりせん。その法律を実際に活用する方法を知らなければ、せっかくの消費者保護の法律もまさに絵に描いた餅。
では、実際に納入してしまった学費を、一体どうしたら返金してもらえるのか。「街角の法律活用術」では、これから機会があるごとに実例をあげながらお話ししていこうと思います。 〆