NPO法人Future Dream Achievement (FDA)が主催する「哲学の会」と言う集まりが月一回あります。FDAの事業目的は、雇用環境の構築・創出、地域活性化につながるまちづくり・環境保全に関わる事業ですが、障がいのある方をはじめとする就労が困難な方々に働く機会の提供を積極的に推進されています。

FDAの理事長である渡邉氏は、IT企業の代表者でもあり、嘗てお取引をさせて頂いたご縁で、参加させて頂いています。5月22日は、有限会社ビッグイシュー日本(本社大阪)の東京事務局代表である佐野未来さんの講演でした。ビッグイシューとは、イギリスで創刊した雑誌で、日本では2003年に事業を開始しています。販売員は全てホームレスであり、彼らに働く機会を提供することを目的としています。

佐野さんの話は、日本のホームレスの現状について、その数がリーマンショック以降その数が高止まりしていること、若年ホームレスの出現やその生活や収入の実態、また、どの様な経過でホームレスになって行くのか等、について実際の現場感覚からの情報に基づき進んで行きます。その中で、印象的なのは、ホームレスの人達も働く意欲を持っている・社会との接点を求めている(人が多い)と言うことで、彼らの就労への道づくりをして、ホームレスからの卒業を促すことが必要となります。

続いて、ビッグイシューの活動ですがホームレスの人達が、同社が編集する雑誌を街頭で販売することによって収入を得て貰う仕組みです。具体的には、販売員として登録、10冊を無償で供給、その売上の一部を自分の生活に使い、残りで次の雑誌を購入します。雑誌の値段@300円でその約半分が利益なので、大きな金額にはなりませんが、それでも自身でお金を稼ぎ、また、販売の過程でお客との会話が生まれることで、社会復帰への意欲が生まれてくる方が多いそうで、過去に150人以上がホームレスを卒業されたとの由。佐野さんによれば、チャリティでなく事業であり、これを拡大するには雑誌としての魅力度UPが必須だそうです。

中小企業の海外進出のことを思い浮かべながら、このお話を伺っていました。日本でのモノ作りの維持が困難との理由で海外に生産拠点を設ける中小企業が相次いでいる中、ホームレスを含む就労困難者が増加し空洞化が進む状況について、やはり何らかの対策が必要ではないかと考えてしまいます。リスク管理が出来ないまま海外進出するよりも、今一度、国内での事業継続ための方策を検討し、雇用の維持を図ることが重要ではないか・・・、どちらが正解と言うのではなく、その方向でのアドバイスも選択肢の一つに入れていきたいと思います。米国では、中国の労賃高騰とドル安から、国内での生産回帰を進める動きが活発化している様です。日本の場合は、円高が大きなネックではありますが、一方で顧客が最も求めている品質、納期、信頼性は世界でもピカイチですから、日本でのモノ作り国際競争力を今一度見直し、同時に雇用問題対策を図ることもアリなのではないでしょうか?

話がそれましたが、関西出身の佐野さん、話に熱が入ると大阪弁がどんどん出てきます。とてもシリアスな話の中でもしっかり笑いをとられるサービス精神も旺盛で、あっという間の一時間半でした。

今まで、ほとんど関心のなかったビッグイシューですが、一度、手に取って見ようと思います。

(2012年5月)