最近、米国企業が生産拠点を海外から国内に回帰する動き(リショアリング:reshoring)が出ているとのニュースを良く耳にします。主な原因はオフショアの生産基地である中国の人件費の上昇と言われています。でも、中国の人件費が高くなれば、もっと安い地域に生産を移すこともあるでしょうし、また、政治目的もあって一部企業の米国での生産回帰が大々的に喧伝されている等、実際には、単純に米国回帰のムーブメントが起っていると言う訳でもない様ですが・・・。

ある米国のサイトに「海外調達:隠れたコストにご用心!(Offshore Suppliers :Beware of Hidden Cost)」と言う記事がUPされていました。要約すると:

海外調達の場合の問題点として:

1.ロジステックに関わるトータルコスト:

運送費、保険の様にはっきりと見える費用から、生産地での労働問題や燃料価格の不安定さ、通関に要する時間など見えにくい側面まで全てを考慮する必要がある。

2.予期せぬ在庫水準

海外での予期せぬ事態発生による納期の遅延に備えるために、少なくとも当初予定した在庫水準の25%分を増加しておかねばならない。

3.品質管理

遠隔地であるため品質に関わる問題発生の際の解決力が低下するので、早急な解決のためには追加費用がかかる。

4.コミュニケーション:

言語と文化に加えて、時差はコミュニケーションの遅延をもたらし、結果リスクを増加させる。          (Shawn Casemore, President of Casemore & Coより引用)

と言うことだそうです。

言語や文化など今更のコメントがあったりして、当たり前すぎるんじゃないの? と思う一方で、「保有するべき在庫水準が25%高くなる」や「遠隔地であるため問題解決力が低下する」との指摘にはなるほど!と思わせるものがあります。採算上の観点だけでなく、在庫による資金や資産の健全性の観点を含めた総合的な判断が必要なのでしょう。

でも、これをよく読むと米国への生産回帰だけでなく日本への応援の様に思えて仕方がありません。

日本企業の品質・納期管理能力と問題発生時の真面目な対応を考えれば、瞬間的に円高で費用がUPしても、また、遠距離によるハンディがあっても、トータルでは決して米国企業に損をさせることは無いことを理解しているの企業も多いのではないでしょうか。

日本の製造メーカーも、色んな角度から国内生産の良さを見直すに時期に来ているのではないかと思います。 Offshoringにしてもreshoringにしても一時のムーブメントではなく、長期に亘り自社の強味を最大限発揮できるビジネスモデルの選択が必要であり、微力ながらそのお手伝をさせて頂くことができればと考えています。 (2012年6月)