今回は、昭和歌謡からビジネスを学ぶこととしました。

曲は「恋のハレルヤ」。昭和42年2月の黛ジュンのデビュー作です。でも、彼女は渡辺順子の本名で昭和39年に3枚のシングル盤を出していますがヒットせず、実質的には再デビューと言うことになります。ハレルヤ.jpg

あまりに有名な作品なので今更解説の必要もないでしょうが、作曲は鈴木邦彦、作詞はなかにし礼、バックの演奏は後にGS解散第一号としてマニアの間では良く知られているブラックストーンズ※です。この作品の素晴らしいところは、それまで、女性歌手のポップ系の曲と言えば、外国曲の日本語訳か、中村八大・永六輔の「夢で逢いましょう」系や岩谷時子系のお上品な曲ばかり※※だったのが、強烈なエレキのイントロと、いきなりハレルヤ~ッと絶叫で、聴き手をぐいぐいと引込んでいくところです。ミニスカートにブーツのスタイルと相まって、中村晃子や泉アキなど、その後の女性ポップシンガーのスタイルを確立した先駆者として、彼女の果たした役割は非常に大きいと言えます。あの美空ひばりさんがブルーコメッツをバックに従えて(ブラックストーンズとは格が違いますね)同様の曲調の真っ赤な太陽を歌っており、彼女のフォローワーになったことからも黛ジュンの偉大さが判ります。※※※

 

ところでこの作品が、ビジネスと何の関係があるのかって??それが、(多分)しっかりあるんです。

注目するところは、サビの歌詞です。「愛されたくて愛したんじゃない。燃える想いをあなたにぶっつけただけなの」と、このフレーズも心に残る部分です。

問題は、この歌詞の主人公が自身の感情を発散することを主としており、その受け手の反応を意に介さないと言う姿勢にあります。若い女性のエネルギーの発散としては、当然なのでしょうし黛ジュンには何の罪もないのですが、これがビジネスとなるとそうは行きません。

我々は、「何のためにビジネスをするのか?」を考えねばなりません。私なりにたどり着いたその答えは、「誰かの役に立つため」です。即ち、「自身が行う行為が、誰かにとって満足感を与える」ことこそがビジネス、即ちお金儲けの基本ではないでしょうか?

先日、レストランの経営関係の雑誌を立ち読みしていたら、経営がうまく行かず自分の店を閉鎖せざるをえなくなった料理人が「自分の作りたい料理を供することに一生懸命になりすぎて、顧客が何を望んでいるかに目配りが足りなかった」と反省の弁を述べていました。雑誌記事用のきれいごとと言えばそれまでなのですが、どんな場合でも顧客重視の姿勢が重要なことは言うまでもありません。

マーケティング分析において3Cが良く用いられますが、この3つのC(即ち、Company, Customer, Competitor)が、同じ重要性を持って語られている様な気がしてなりません。

特に中小企業診断士は先ずCompany分析をSWOTで行うことから始めるのが習慣になっている様に思います。

しかしながら、基本はあくまでCustomerです。

・自身が提供するサービスが誰のためになるのか?その顧客のニーズに見合っているのか?を出発点として、

・次にCompany (自身)の強味・弱みを分析する。

・その分析の過程でCompetitorを視野に入れる(自身が強味と思っている点は他社と比較して本当にそうなのか?)

と言う構成になるのが、本来の形であろうと考えながら、今夜も「恋のハレルヤ」を聴いています。

 

尚、私が応援している「デジャブ」と言う昭和歌謡のバンドがあり、黛ジュンについては「恋のハレルヤ」は勿論のこと、9曲目の「土曜の夜何かがおこる」まで、8曲目の「涙でいいの」※※※※を除き全て、加えてB面では「ブラックルーム」、「愛が欲しいの」、LPから「好きなのに好きなのに」※※※※※と広範囲にカバーしています。

6月に突然ボーカルの女性が辞めて、しばらく活動を休止していたのですが、新たなボーカルが決まり10月17日より、五反田のライブハウス“ロッキー”で活動を再開する予定です。

昭和歌謡ファンの方は是非、私と一緒に応援してください。デジャブのURLと恋のハレルヤのYoutubeは以下の通りです。

http://www.shouwa-kayou.jp/

参考

※  ブラックストーンズ:昭和42年に「ヘイ・ミスターブラックバード」でデビューした。作曲は「涙の太陽」の中 島安敏・作詞はなかにし礼で、曲・演奏もかなりいけるのだが、一曲で解散。同年に主要メンバーがシェリーズを結成し「想い出のシェリー」でデビューしたが一曲で解散。32時間連続演奏記録を打ち立てたことが、当時のヤングミュージックに掲載されておりGS史にその名を遺している。

※※ 当時の和製ポップスのヒット曲は、二人の銀座(永六輔作詞)、夜明けのうた(岩谷時子作詞)、銀色の道(塚田茂作詞)等、「山の手」風のハイカラな歌詞の曲が多かった。

※※※ 黛ジュンは、真っ赤な太陽をカバーしており、ギターは実兄で作曲家の故三木たかしが演奏していたらしい。当時は美空親子の承諾が得られなかったとの理由でLPに収録されず、90年代になって漸くCD化されたとのこと。GS色はこちらの方が強い。尚、前述のデジャブは、黛ジュン版真っ赤な太陽をカバーしています。

※※※※ 昭和44年の世相を表すかのような暗い曲で、同じ作曲家・作詞家の曲とは、とても思えません。

※※※※※後に五十嵐じゅん(中村雅俊の嫁さん)が、「ちいさな初恋」と曲名を変えてカバー。

(12年10月)