今年1月18日と20日、最高裁でよく似た2つの判決が連続して言い渡されました。
ともに、テレビ番組を録画してネットで海外に送ってあげるというITビジネスに対し、テレビ局が
「番組を勝手に録画して送るなんて違法なビジネスはダメ!」
と訴えた事件の上告審。
たかが数人のお客相手の零細ベンチャーとはいえ、ネット全盛の時代を迎えて、テレビ局も黙っているわけにはいかないというわけです。
この2つの事件、実は、両方とも知財高裁という著作権のプロの裁判所が、「テレビ局の負け!」と判断していたんです。
細かいことは省きますが、ごく簡単に言えば、「家庭のDVDで番組を録画して自分で楽しむようなことを、ちょっとお手伝いするだけのビジネスなんだから、まあ問題ないでしょ」ということ。
ところが、最高裁は「高等裁判所のその判断は間違ってるから、もう一度最初からやり直しなさい」という判決を出したんです。これは、実質的には「テレビ局の勝ち!」と大逆転したってこと。
ところで皆さん。
そもそも、最高裁の裁判官ってどういう人か知ってますか? 合計15人いるんですが、実は全員が司法試験に合格した法律の専門家とは限らないんです。つまり中には、経歴は優れているかもしれないけれど、法律の専門家じゃない人も混じってるわけ。
最高裁の裁判官といえば、当然最高の法律家ぞろいかと思いきや、意外や意外!でしょ。最高裁って、実は最高じゃなかったんだ……。
法律の専門家でもない人が、最終的な法律判断をする。時には死刑の確定までやっちゃう。しかも、最高裁の判決は、その後は法律に負けないほどの効力を持つことになります。考えてみれば、これってかなりコワイ。
今回の2つの事件は、第1審の東京地裁、2審の知財高裁と、ここまで3人ずつ合計12人の裁判官が担当しています。中でも知財高裁の6人の裁判官は、いわば著作権にかけてはプロ中のプロ。一方、今回の逆転判決は、最高裁小法廷の著作権法の素人裁判官を除いた実質的には2人の裁判官の判断で下されたようなもの!(元知財高裁裁判官のM弁護士のコメント)なんだって。
プロ中のプロが判断したことが、こうも見事にひっくり返ったのを見ると、「おいおい、大丈夫か、最高裁?」なんて気がしてくるぢゃないですか。
知財高裁の裁判官は、著作権以外に、特許や発明、商業デザインなど産業の発達分野も専門にしています。それだけに、有能な若者たちの野心的な技術革新に一定の理解を持っているはずです。知財高裁の判断は、著作者の保護とITテクノロジーの発達という両面を、深く考えて下したものだったのだと思います。
それを、素人さん(失礼!)も混じった最高裁が、ものの見事にひっくり返してしまった。最高裁まで行くと、結局、国とか大企業とか、大抵は力の強い方が勝つことが多いような気がしてなりません。公の秩序とか言う名目で、結果的に既得権益体制を守ることになってしまうのって、どうなんでしょうか。
強きをくじき弱きを助けるなんて、大岡越前の名裁きみたいなことを期待しているわけではありませんが、それにしても……。
野心に満ちた若者たちの革命的な挑戦を、次から次へとモグラ叩きみたいに破壊していく。果たして、これが法律の役割なんでしょうか? かつて松下幸之助や本田宗一郎や井深大を生んだ国が、こんなことでいいのでしょうか?
でも、私は秘かに信じています。こんな日本の片隅で、未来のジョブズやゲイツやザッカーバーグが、じっと息をひそめながらチャンスをうかがっているに違いない、と
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