「これ以上、一体何があるっていうんだ?」
和樹さんは、とつとつと語り始めた。
「父さんには、学生時代から就職してからもずっと仕送りしてもらってたよね。それなりの給料を貰うようになって何年も経つのに、結婚式の費用ぐらいの貯金がどうして出来てなかったのか、変に思わなかった?」
そう言えば……。
幸次さんは、結婚式の費用の話を切り出された時、ふと不審を感じた事を思い出していた。
「父さん。ぼくが大学に入って寮生活になったのに合わせて、母さんが叔父さんちから出たのは知ってるよね」
「ははあ、なるほどな。卜部と一緒になったって訳か」
「さすがに母さんも口をにごしてたから、その辺の事情はよく分からなかったんだけど、どうやらそういう事だったらしいんだ。その頃、卜部先生の方も離婚話にほぼ片がついたみたいで」
「お2人さん、晴れて一緒に暮らせるようになった訳だ」
幸次さんは、元妻に未練があった訳ではない。とはいえ、婚姻中からずっと裏切られ続けていたのだ。そんな事の成り行きを聞かされて愉快な筈はない。
「で、それがどうしたってんだ。由紀が再婚しようがどうしようが、俺の知ったこっちゃない」
「父さん……。母さんが昔、マルチ商法の愛善会にはまり込んで大きな借金作ったの、覚えてるよね」 クリックして続きを読む