昨年来、胃カメラ屋さんとティッシュ屋さんが世間を騒がせていますが、最近になって企業不祥事が続出してきました。先日のAIJの巨額損失に始まり、今日の新聞では、黒崎播磨と言う新日鉄グループ企業のインサイダー事件、NTT東社員の収賄、東芝ライテックの横領事件と一日に3件もの事件が目白押し状態で発覚しています。それも、日本を代表する企業ばかり。これだけガバナンスの重要性が叫ばれている状況下、一体どうなっているんでしょうか?

私もCIA(公認内部監査人)の端くれとして関心を持たずにいられません。

不正には3つの要因(不正のトライアングル)があると言われています。即ち、

①    不正を犯す動機の存在(合法的な方法では解決できない負債を抱えているなど)

②    不正を犯す機会の存在(不正行為を犯しても発見されない環境下にいるとの認識)

③    不正を正当化する理由の存在(幹部だってもっと悪いことをやっているとか何とか・・・)

です。

私見ですが①と③を見つけるのは難しいと思います。①は個人的な事情であり、上司が部下の事情を必要以上に詮索するとパワハラ・セクハラになりかねません。また、今日事件が発覚した企業の社員であれば、犯罪に手を染めなくても十分生活できる給与を貰っているはずです。  ③も難しいです。自分を信頼してくれていると思っている部下だって本音は判りません。となると企業が不正をコントロールするには②の「不正の機会を与えない」ことに尽きるのではないでしょうか?

そこの中小企業の社長サン!

会社の帳面や支払の仕組みを自分で理解し、偶には自身でチェックしていますか?担当社員に任せっきりにしていませんか?自分のPCのパスワードを秘書に教えていませんか?社員の深夜残業や休日出勤の実態を把握していますか? 時々休みを取らせて別の社員に業務を交代させていますか?

機会があれば思わず不正に手を出す・・・。人間なんてそんな弱いものかも知れません。

 

さて、私の年代になると73年の滋賀銀行山科支店の奥村彰子による9億円の現金横領事件が大きく報道されていたのを(当時京都に住んでいたこともあり)思い出さずにはいられません。事件発覚後すぐに日活より「OL日記 濡れた札束」として公開されました。

今や死語となったオールドミスで支店のコンピュータ操作を一手に引受けている行員が、偶々学生時代の同級生の男と出会い、XXXの世界に引込まれてしまう。その男はギャンブル狂であったが、男と別れたくない彼女は、上司が彼女の業務内容を全く知らないのを良いことに、横領を重ねていく・・・多分、そんなストーリーだったと記憶します。

今日の3件の事件は判りませんが、テイッシュ屋さん事件の動機はギャンブルだったことを思うと、日本企業のガバナンスはこの40年間で果たして進化したのだろうか?との疑問を持たざるを得ません。

この濡れた札束の主人公北村潤子(奥村彰子)を演じるのは中島葵。何と、有島武郎の孫、森雅之の娘だったそうですが、91年に46歳の若さで子宮がんで亡くなられた由です。(2012年3月)