それ程忙しいわけでもなかったのですが、あまり映画を見る機会がなくて、このコラムもすっかりご無沙汰しました。先日、正月に録画した山崎豊子の沈まぬ太陽を最後まで見たので、チョイト一言・・・。

先ず、あらすじなのですが小説で全5巻、映画で3時間半と言う超長編を数行に纏めると、

・国民航空(NAL)の労組委員長である恩地(渡辺謙)は、ストライキを決行したことを理由にパキスタン・イラン・

ケニアへの海外赴任を次々と命じられる。一方、副委員長であった行天(三浦友和)は、経営に対して組合脱

退を約束しエリートコースを歩むことになる。

沈まぬ1.jpg・恩地が10年に亘る海外赴任から帰国早々、ジャンボ墜落事故が発生し、遺族への対応を命じられ持ち前の

誠意で遺族に対応する。

・NALも経営を案じた利根川総理(加藤剛)により、大阪の紡績会社社長である国見(石坂浩二)はNAL会長

に迎えられる。国見は、恩地を抜擢して一緒に会社再建を進めようとするが、政界とNALの癒着を表沈まぬ②.jpg面化

する結果となり、解任されてしまう。

・恩地は遺族対応係への復帰を希望するが、上司となった行天により再度ケニアへの赴任を命じられる。その沈まぬ③.jpg

行天は役員にまで出世するが運輸省への贈賄が発覚し地検に出頭を命じられる。

と言ったところでしょうか。

山崎豊子お得意の勧善懲悪モノで、善(恩地:渡辺)VS悪(行天:三浦)の対極的な生き方は、白い巨塔の財前(田宮次郎)VS里見(田村高廣)と相通じるものがあります。

さすが山崎豊子と言うか、渡辺謙の迫力もあり、飽きることなく一挙に最後まで見せてくれましたが、果たしてどこがこの映画の山場だったのか? 過去の作品に比べて印象が薄いように感じるのは私だけでしょうか。

さて、本題の経営アドバイスですが、CSR意識のかけらもないNAL経営陣のいい加減さは言うまでもないのですが、問題社員を僻地へ「飛ばす」と言う発想は、40年前とは言え如何なものでしょうか?映画の冒頭のNALのパーティで、在日ケニア大使が恩地のアテンドを望んだように、どんな地域でも、その地においては会社の代表であり、地域の有力者との関係が出来る訳ですから、そこに問題社員を送り込んで厄介払いをした等と考えるのはなど問題外だと思います。本当の問題社員であれば、本社の手元においておかしな動きをせぬように見張って置くべきでしょう。また、恩地自身はカラチ駐在の辞令が出た時に、「なぜ自分が行かなくてはならないのか」と上司に食ってかかる場面がありましたが、彼ほどの熱血社員にしては残念な行動でした。黙って辞令を受け容れるサラリーマンの美学が欲しかったところです。

う~ん、あまり参考になる様な評論になりませんでしたか???・・・・。

この映画のもう一つの見所は、墜落事故で息子夫婦と1歳の初孫を亡くす宇津井健(80歳近い宇津井の初孫が1歳と言うのは、設定にかなり無理がある様に思いますが)と恩地の娘の婚約者の母親として秋野暢子が共演していることです。撮影中に友和さんを交えて百恵サンの話題で盛り上がったのでしょうか?

それと、瀬島龍三を演じている品川徹ですが・・・。不毛地帯の壱岐正(仲代)は、どこか人間臭さを感じたのですが、品川の瀬島は感情の無い鬼になりきっておりメチャ怖いです。(2012年3月)

(写真は、角川映画より引用)